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FREE from FREEDOM

隔週で発行している「自由大学マガジン」の人気のコラム、FREE from FREEDOM!そのバックナンバーをお届けします。


ずっと昔から人々を魅了してきた夜空。万葉集にも月や星のことを詠んだ歌が数多く残されている。現代の私たちにとっても夜空は特別な存在。仕事で夜遅くなった帰りにふと見上げる夜空の美しさに癒されたりすることも多い。

情報や便利な道具にあふれて、なんでも自分の思い通りになるような錯覚に陥る人も多い現代。でも宇宙はそんなことは関係なく動いている。人類の思い通りにいかないことも多い。2013年、大きなほうき星になるだろうと期待されたアイソン彗星。どんなに大きな尾をひくだろうと天文ファンの誰もが期待した。いよいよ彗星が最も太陽に近づき、最も明るくなるとされた日、彗星は太陽に近づきすぎて消滅してしまった。

がっかりするけれど、便利になりすぎた世の中、人間の思う通りにはいかない宇宙にほっとする気持ちもある。何事につけリスク回避することを求め、不確実性を排除し、秩序よく物事が運ぶことを大切にする社会。だからこそ計算できない宇宙がみんなの興味を集める。次にいつ大きな彗星が見えるのかは神のみぞ知る。そこにロマンがある。生きているうちに空いっぱいに尾をひく彗星が見られるか、またいつくるかわからないチャンスを待つのだ。

アイソン彗星だけではない。年に十数回とやってくる流星群だって、満月の日に重なってしまえば月明かりで見える星の数はぐっと減るし、曇りや雨になるとも限らない。時間も自分の都合のいい時間に出て来てくれるわけではない。天体観測は思い通りにならないことだらけだ。

それでも人を引き付ける魅力は何だろう。それはとてつもなく大きな宇宙の存在そのものであるように思う。私たちも宇宙の
ダイナミズムの大きな大きな流れの中にいる。特別な現象でなくてもいい。毎日の月の満ち欠けや、空に見える星座から、たまにはそんなことを感じてみてはどうだろう。空は毎日、一瞬一瞬がそのとき限りのもの。地球も星も動く。天気だって変わる。今この瞬間をめいっぱい楽しむ大切さを宇宙は私たちに教えてくれる。

text: 小酒ちひろ(クリエイティブチーム)

[自由大学マガジン vol.111 2014/6/25]

 



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