講義レポート

世界の手仕事とフェアトレード

「自由になる旅学」講義レポート

自由になる旅学」第1期 第3回目の講義はフリーアナウンサーの末吉里花さんをゲストにお迎えしてお話をうかがいました。

TBS「世界ふしぎ発見!」のミステリーハンターでもある末吉さんには過去にも自由大学 旅学のゲストとしてご登場いただいたのですが、いつも多く聴講者が集まる大好評の講義となります。今回も彼女のライフワークの1つでもある「フェアトレード」に込められた思いについてお話を伺いました。

 

自分の好きなことで世界を変えていく

末吉さんが環境問題を意識するきっかけとなったのは、番組の取材で訪れたタンザニアのキリマンジャロ。それまで登山経験がほとんど無かった末吉さんが、アフリカ大陸最高峰(標高5,900メートル)の頂上で見たものは、気候変動によって消滅しかかっている氷河でした。今まで感じることのなかった温暖化の影響を目の当たりにして、このような環境問題を日本でも広く伝えていこうと覚悟を決めたそうです。

帰国後、様々な活動に取り組んだ末吉さんですが、ファッション誌で偶然見つけたワンピースがその後のライフワークに大きな影響を与えることになりました。

フェアトレードファッションのパイオニア的な存在でもあるPeople Tree。「ファッションで世界を変えていく」という代表のサフィア・ミニーさんの言葉は、末吉さん自身が大好きなファッションと環境問題の活動をリンクさせる大切なメッセージとなったそうです。

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まずは知ることから始めよう

日本でも少しずつ知られるようになってきた「フェアトレード」ですが、世界では1940年代から市民運動からスタートしてその考え方が広まっていったそうです。

チョコレートの原料でもあるカカオ、洋服の素材として多用されるコットン、サッカーボール… 低価格・大量消費の現代社会で私たちが何気なく見かける商品の中には、低賃金・児童労働・長時間労働といった、発展途上国の劣悪な環境下で生産された物が少なくないそうです。

世界で使用される殺虫剤の約16%、農薬の約10%がコットン栽培で使われており、それが何千万人という生産者の健康被害につながっていること。また、2013年4月にバングラディシュで起きた工場崩壊事故で死傷(3,000人以上)した人達が、実はファストファッション・ブームの闇の犠牲者であったこと。 私たちの日常生活の裏側に隠れていた出来事は、どれも驚きばかりでした。

スターバックスなどのグローバル企業だけでなく、国内でも無印良品やイオン等でもフェアトレードへの取り組みが広かっているそうです。では、私たちに今すぐできることは何なのでしょうか?

「みなさんの大切なお金を使う時に、ただ値段や流行に流されるのではなく、商品やサービスの背景を少しでも知った上で判断をして欲しい。」と末吉さんは答えてくれました。そして自分が得た知識を周りの人に伝えたり、実際に家族や友人へのプレゼントにフェアトレード商品を選択してみるなど、「知る→伝える→実行するの3つのプロセスを意識することが大切です。」というアドバイスも頂きました。

「便利な都市生活のしわ寄せが、海を渡った先にいる貧しい人たちに大きな影響を与えている。誰かの幸せの為に、他の誰かが犠牲になってはいけない。」これは、末吉さんが世界各地を旅して感じた共通の思いだそうです。

「問題は認識されてないと問題化されない。だから、このような問題をみんなが気づくところからスタートしていくことが大切です。人間が作り出した問題なので、人間でしか解決できません。1人1人が毎日の生活の中で少しづつ取り組みを積み重ねていくことが、世界を変えていくと信じています。」という末吉さんの優しく力強い一言が心に響きました。

講義終了後は恒例(?)となった放課後活動。COMMUNE246のフードカートで、旅人トークを楽しみました!

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(Text:キュレーター Kenichi OKUZUMIさん)



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