講義レポート

ヒットのカギは著者のPR力にあり!

「出版道場」講義レポート

こんにちは。「出版道場」キュレーターの岡島悦代です。「出版道場」は6期を迎え、おかげさまで生徒数が過去最高を記録いたしました! 今期は女性が8割を占めているせいか、華やかな雰囲気の中で講義が開催されています。

3回目の講義は「売れる!と思わせるプロモーション戦略を練る」ということで、コミュニケーション・ディレクターの力丸 聡さんに、初ゲストでお越しいただきました。力丸さんは、大学在学中よりCMプランナーとして活動を開始。日本国内で活動後、カナダに渡りPR会社を設立。アーティストやアパレルブランドのPRなどを担当し、現地メディアでも多数取り上げられた実績の持ち主です。

▲右が力丸さん。鈴木収春教授は顔が半分隠れている左奥の人です。

著者がPR力を身につければ企画も通るし本も売れる
プロモーション戦略を練るって言っても、本を出したら出版社が宣伝してくれるんじゃないの? それって出版社の仕事じゃないの? と思う方も多いと思いますが、それはヒットがかなり期待されている大型企画の場合。鈴木教授より、まず、出版業界の広告をめぐる解説がありました。

「電車や新聞広告で大々的に宣伝している本は、それが新刊の場合、単純に初版部数が多いことを意味しています。目安としては、初版2万部超ですね。先日エージェントとして携わった株式会社タニタ&細川モモ『タニタとつくる美人の習慣』(講談社)は、JR東日本全線での壁面広告&窓上広告、日経新聞朝刊で半5段の広告などが打たれましたが、これらは初版部数が多いため、出版社の決断で実現できたものです」(鈴木教授)

ほとんどの書籍は初版が数千部なので、宣伝予算がほぼないに等しく、大規模な広告を打ってもらうことは期待できません。また、本を並べただけで売れる時代も終焉していますので、小部数からヒットを生み出すためには、著者のPR力が必要不可欠なのです。

1日に200タイトルが刊行されている現状では、本を出たことを知ってもらうのも大変。予算はない。だけど、多くの人に知ってもらいたい。だから、『SNSで多くの人に応援してもらえる』『つながりのあるメディアで取材してもらえる』などといった、著者が無料で実現できるPRが重要視されるようになったのです。体感的にも、PR力のある著者の本は、かなりの確度でヒットさせることが可能です。逆に言えば、PR力がある著者の書籍企画はすんなり通るということでもあります」(鈴木教授)

PRが広告より信頼されるのは第三者が伝えるから
ここで、満を持して力丸さんの登場。アナログな紙資料配布の鈴木教授に対し、力丸さんはMacBook Airとパワーポイントのプレゼンテーションで、広告とPRの違いを解説します。

「”広告”と”PR”の違いって分かりますか? 個人のコミュニケーションに置き換えて考えてみましょう。Aさん(情報発信者)、Bさん(情報受信者)、Cさん(情報媒介者)がいるとします。”広告”は、Aさんの「Bさんにウチのハンバーガーを買ってほしい」という想いを、AさんがBさんに直接伝えること。”PR”は、Aさんの「Bさんにウチのハンバーガーを買ってほしい」という想いを、Cさんが代わりにBさんに伝えること。Cさんが「Aさんの店のハンバーガーなんだけど、こないだ食べてみたらすっごくおいしくて、これまでのハンバーガーと全然違うんだよね。今度行ってみなよ」とBさんに伝えた場合、「行ってみよう」と思う確率は、前者よりもだいぶ上がりますよね。CさんがAさんの友だちだったり、信頼している人だったりしたら、なおさらその確率は上がります。第三者を挟むことにより情報の信頼性を増し、Aさんの店のハンバーガーの価値やブランドイメージを上げること。これがPRです」(力丸さん)

“人の心をくすぐる要素”がPR効果を左右する
でも、人がPRしてくれるようになるには(クチコミ)、ある要素が必要となります。それは、人に伝えたくなるネタかどうか。広告業界では、このネタのことをインサイトと呼ぶそうです。

「人に情報を伝えるとき、心をくすぐる要素=インサイトがあるのかが大きなポイントとなります。単に『ハンバーガー屋に行った』という事実に、『すげぇ美味しかった』とか『匂いが強烈だった』とか、ハンバーガーの味が普通でも『インテリアが豪華だった』など、人に思わず伝えたくなるインサイトが押さえられているかどうかが、PRが成功するかどうかの肝なのです」(力丸さん)

それでは、これを著者が自分の本をPRすることに置き換えると、どのようになるのでしょう?
「出版が実現すれば、雑誌やニュースに取り上げられたいとか、講演会を開催したいとか夢は広がりますよね? 本や著者にインサイトをしっかり押さえたコンテンツ力があれば、メディアに露出すること、SNSで情報をクチコミしてもらうことは難しいことではありません。

それに、出版後のPRだけでなく、出版が早く実現するようにメディア露出を狙うときにも、インサイトという視点は役立ちます。あなた、もしくはあなたのコンテンツにインサイトをつくりだすことを意識すれば、PRは難しいものではなく、あなたの力強い味方になります」(力丸さん)

誰にでも”人の心をくすぐる要素”はあるのだと、力丸さんはおっしゃいます。ただ、その要素の表現の仕方にもポイントがあるようです。この後、力丸さんがプロデュースする、あるアーティストさん(以前はメディア露出なし)のYouTubeを絡めたメディア戦略の過程を見ていくことで、”人の心をくすぐる要素”の見つけ方と、SNSも生かしながらメディアに掲載される方法を、具体的に紹介いただきました。

力丸さんは「出版道場」のレギュラーゲスト講師に決定したので、ご興味ある方はぜひ講義でその全貌をチェックいただけたらと思います!受講生限定のフェイスブックの非公開グループでは、出版業界の最新情報や講義レベルの議論が展開されていて、アフターフォローも充実しています。みなさまの入門をお待ちしております!



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