講義レポート

無料でメディアに宣伝してもらう戦略とは?

「出版道場」4期 講義レポート

こんにちは。出版道場キュレーターの岡島です。第4期は、3日間の短期集中バージョンで講義を開催しております。3月4日(日)に行われた第3、4回講義のレポートをさっそくお届けします!

syuppan.jpg▲第4回ゲストの古家政吉さんと、受講生の小宮さん(左)、不破さん(右)。

ペイする広告がないという悲劇!?
第3回講義のテーマは「著者によるプロモーション戦略」です。講義の冒頭から鈴木教授の赤裸々トークが展開。「書籍は単価が安く、感動してもひとり1冊しか買わないので、基本的にペイする広告はありません。PR予算は大部数の本に集中されるので、新人の場合、新聞広告も打たれないと思ったほうがいいです」……つまり、新人がヒットを狙うには、販売は出版社任せにするのではなく、本や自分をPRする力を高めないといけないのです。

PRは本ができた後の話と思いがちですが、著者側で効果的なPRができることを企画書に織り込めれば、企画が通る確率は急上昇するそうです。PR力を身につけることは、自分のやりたい企画の実現に直結するということ!

コネではなくマッチングが重要
講義では、鈴木教授が芸能マネージャーや大手版元のPR担当とともに考案し、自身も実践しているという「誰でも効果的なPRができるフレームワーク」を公開。「いかにして(無料かつコネなしで)テレビ、雑誌、新聞、ニュースサイト、ソーシャルメディアで話題にするか」という、デフレ時代の戦略です。フレームワークを活用して、受講生のみなさんも自身が出版したいテーマで考えられるPRプランを発表しました。ハードルがそれほど高くなく、重要視すべきなのは新聞、雑誌、ウェブ、ラジオなどでの著者インタビューや書評掲載の実現だそうです。

「コネがあればメディアに取り上げてもらえると思うかもしれませんが、半分正解で半分間違い。重要なのはマッチングで、その媒体に著者や本が掲載される必然性があれば、いきなり電話しても取り上げてもらうことは難しくありません。実際、ある投資家としても有名な経営者の本をつくったときは、コネが皆無だった『日経ビジネス』『日経マネー』『プレジデント』などにインタビューの掲載が次々と決まりました。次の講義のゲストの古家トレーナーも、新人ながら本の発売を機に『クロワッサン』に4ページ、『gainer』に6ページで登場しています。掲載されたのと同じページ数、掲載誌に広告を出すと、どちらの書籍も数百万円かかりますが、かかったのは電話代と本を送る代金くらい。どの書籍でもメディア営業をやらない手はありません」

マッチングを重視して大きく取り上げてもらえれば、部数が少ない専門誌などでも、意外なほどPR効果が期待できるとのこと。取り上げてもらうコツについて話がおよぶと、受講生のみなさんも真剣な眼差しに。ローリスク・ハイリターンなこの手法は、本だけでなくさまざまな場面で応用できそうです!

テレビ出演は後から狙う
ちなみに、もちろん一番PR効果があるのはテレビですが、テレビ側もヒットした本を紹介したいので、売れる前から営業するのはなかなか難しいそうです。「出版業界ではよく、テレビ(地上波)しか確実に効くパブはないと言われます。たしかにそれは事実かもしれませんが、テレビのリサーチャーが何を見てネタを仕入れているかと言ったら、雑誌、新聞、ラジオ、ウェブメディア。つまり、これらのメディアに露出するのが、テレビの出演依頼をもらう一番の近道なんですね。特に最近はリサーチャーがウェブで面白い人がいないか調べることが多くなっているので、ウェブに出す情報を魅力的にするのも、テレビに出やすくなるポイントのひとつ」

ソーシャルメディアでのフォロワー数などの数値とヒットの相関関係なども解説され、真剣かつなごやかなムードで講義は終了。休憩中も受講生たちの意見交換が続きます。道場っぽいですね!

他ジャンルの専門家を目指してもいい
そして第4回講義「売れる!と思わせる専門家になる」には、鈴木教授がエージェントを担当した処女作『細マッチョ改造計画法』(講談社)が3刷と絶好調のフィジカルトレーナー・古家政吉さんがゲストで登場! ここでいう売れっ子の専門家とは、あるカテゴリーでトップレベル、もしくは注目を大きく集めているプロのことです。

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▲ほのぼの講義風景。鈴木教授は風邪気味でマスク装備中。

toyosu.jpg▲受講生の小宮さんが豊洲の紀伊國屋書店で撮影してくれた平積み中の『細マッチョ肉体改造法』。売れてます!

古家さんには他の期にも何度かゲスト出演していただいています。以前はデビュー寸前の著者として制作秘話を交えてトークをしてもらいましたが、数ヵ月経ったいまは書籍が見事ヒットし、注目のトレーナーとしてメディアでの露出がガンガン増えています。

古家さんはK-1王者3人をはじめ、トップアスリートのフィジカルトレーナーとしてご活躍されていますが、職歴のスタートは電力関係、そして建設業とまったくの畑違い。それがある時、スポーツに仕事として携わりたいという理由から、30歳でトレーナーを目指すようになります。ただのトレーナーではなく、一流のスポーツ選手と一緒に表舞台に立てるようなトレーナーです。

sensyu.jpg▲左から久保優太選手(K-1 WORLD MAX 2011 -63kg級日本王者)、古家さん、長島☆自演乙☆雄一郎選手(K-1 WORLD MAX 2010 -70kg級日本王者)、京太郎選手(第2代K-1ヘビー級世界王者)。

後発だから練ることができた遠回り戦略
ただ、後発のトレーナーですから、普通にやっては20歳からやっているトレーナーに負けてしまいます。選手と一緒に表舞台に立つという目的を実現させるため、古家さんはまず、遠回りして整体の技術を身につけました。身体を鍛えるだけでなく、治す・整える技術も持つことで、選手との信頼関係を築こうとしたのです。その後も心理学の資格を取得するなど(師匠はテレビでもおなじみの心理カウンセラー・晴香葉子先生)、他のトレーナーとは一線を画す戦略で、選手を成功に導きながら自分の目標も実現させてきたストーリーには、受講生のみなさんも目からウロコの様子!

よく「人生を掴む」という表現をしますが、これは自分の意識が受け身から攻めに転じることではないでしょうか。なりたい自分と今の自分の距離を縮めるために行動する。実績を0から1にするには、思考を繰り返すより行動するしかないのだなと思いました。古家さんにとっては、整体師として身体のケアで帯同した総合格闘家・大山峻護選手のミルコ・クロコップ戦(PRIDE 武士道 -其の四-)が、0が1になった瞬間でした。

トップになれるカテゴリーを絞る
他の職種も同様かもしれませんが、トレーナーは星の数ほどいて、ライバルが多い業種です。その中でトレーナーとしての地位を確立するためには、戦略的に勝負できるキーワードを選ばないといけません。古家さんの場合は「格闘技×トレーナー」というキーワードでポジションを確立しました。

そして、トレーナーとしてK-1三冠を達成したことにより、そのポジションをさらに強固にし、本の出版が実現したのです。チャンピオンを3人育てたフィジカルトレーナーの筋トレ本ですから、本に説得力がありますよね。

専門家として他者から評価されるためには、自分のスキルと目指すカテゴリーという「キーワードのかけあわせ」がポイント。この講義でも鈴木教授が開発したフレームワークをもとに、受講生のみなさんにそれぞれの専門分野でどのキーワード(やりたいことに限る)をかけあわせるとトップを狙えそうか(もしくはグーグルで1ページ目に表示されそうか)を発表してもらいました。ちなみに、鈴木教授は現在「出版エージェント」というキーワードですでにグーグル1ページ目を達成しているそうです。その理由は、同業者が少ないからだとか。ライバルが少ない専門家を狙うのも手かもしれませんね!

専門家はワンソース・マルチユース

IMG_0013.JPG▲古家さんは出版を機に「クロワッサン」や「gainer」にも大きく登場。

鈴木教授は「専門家として評価されると人生設計に有利」と言います。なぜなら、ひとつの軸からいくつもの企画を生み出す可能性があるからです。本も出せますし、講演もできますし、メディアからも声がかかりますし、監修した商品もできるかもしれません。

自分の培ってきたキャリアの中で、もっとも武器になるものを土台とし、ベクトルを決め、効果的で現実的な方法を選び、実績を積み上げていく。古家さんの実体験と鈴木教授の実践的なアドバイスにより、受講生のみなさんが「著者になれたらいいな」から「著者になるために行動するぞ」という雰囲気に変化するのが感じられた講義でした。



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