講義レポート

対話の中から”キーワード”を見つけよう

「質問学」講義レポート

「質問学」キュレーターの岡島です。「質問学」は、コミュニケーションの質を上げる”質問力”を磨くための講義です。第2回目は、ゲストに雑誌『エココロ』のプロデューサーであり自由大学「神社学」の教授でもある中村真さんをお迎えしました。

相手の視点にフォーカスして、もう一歩踏み込む質問を
中村さんを「取材する」という設定で、講義がスタート。受講生はそのやり取りを聞きながら質問を考え、取材後には質問タイムが設定されています。今回のテーマは「キーワードを探す」です。

「日常の会話では、とくに目的を意識せずに言葉を交わしてしまいがちですが、”取材”はなんらかのテーマに沿って原稿や映像にするという目標を達成するための大切なプロセス。的確な『質問』で上手く要点を聞き出せなければ、取材後にまとめることはできません。会話の中からキーワードを見つけると、対話のポイントをつかむ目安や手がかりになります」(中吉教授)

テーマに沿ったキーワードを使って質問をすれば、「話が広がりすぎて、焦点がぼやけてしまう」問題を防ぐこともできます。

みんなが見守るなか、公開取材が始まりました。中村さんは雑誌『エココロ』を6年前に創刊されると同時にエスプレという会社を立ち上げました。”エコな心を広めるライフスタイル”を発信するエココロプロジェクトの中心となる雑誌『エココロ』プロデューサーとして、「エコを感じる心」からくる造語”エココロ”という言葉に込められた思い、そして創刊からの今に至るまでの苦労や成功談、そして今後に向けての展望を伺いました。

良い質問をするには、本質を引き出す共感力が大切
『エココロ』では雑誌本体と連動して、実際に体験できるようなワークショップやコンテンツも企画しています。ecocolo.comでは、イベントの参加申込や、掲載商品を購入できたりと多面的立体的に”エココロ”を感じられる仕組みを今後も多数展開するとのこと。

これまで、数多くの取材を受けてきたという中村さんに、その中で経験した”良い質問・ 悪い質問”について訊いてみました。

Q:これまで印象に残っている、「良くない」質問はありますか?
A:「質問の丸投げ」をされると、答える意欲も低下しますよね。何のために質問をするのかによりますが、いい話を引き出したいなら、事前にある程度の準備をしてくるのがマナーではないかと。こちらが話したい内容について、相手にまったく基礎的な知識がなければ、もっと手前の事や前提からすべて話さなくてはいけない。

ただ訊けばいいのではなく、相手の立場になって考えてみること。聞き手側に何らかの実体験が伴っている質問だと実感が伝わるし、おのずと端的に答えられます。

Q:「良い質問」とはどのようなものでしょうか?
A:たとえば、こちらが想定していないところまで誌面を読み込んでこられるとドキッとするし、同時にうれしくもある。うれしくなるとつい余計なことまでしゃべってしまう。今日の講義の冒頭でも「相手にフォーカスする」ことの重要性を話されていましたが、相手の意図からさらにもう一層を深めようとする質問と、上っ面だけの質問とでは、当然ですが返す答えが変わってくる。人間なので、言わんとすることを上手に汲み取ってもらえると、気分が良くなりますよね。

同じような取材内容でも、聞き手次第で、話し手から引き出される答えや言葉の深さも変わってくるもの。そんな質問をされると、こちらも心で答えようと思います。

キーワードを見つけて、質問を深めよう
ひと通りお話を伺った後、受講生が4つのグループに分かれて、心に残ったキーワードを出し合って発表をしました。「実体験」「一層を深める」「五感に伝える」「心で答える」「生きているだけで幸せ」--それぞれ印象的なキーワードが。そして質問タイムに突入です。思い思いにたくさんの質問が飛び出しました。

最後に出た「不安や不満はないのですか?」という質問にたいして、「なくはないけれど、それさえも楽しめる男になりたい」とおっしゃっていた中村さん。受講生も中村さんの熱のこもったお話に多いに刺激を受けた様子でした。
「対話のなかで端的なキーワードを見つけたら、それを軸に質問を組み立ててみましょう。会話を展開しながらも、自分が聞きたいことや相手が話したいと思っているポイントの鉱脈を探ります。ピンときたら、『たとえば、それはどういうことですか?』とか『具体的に言うと?』と一歩先をうながす言葉でツボを押してみる。そこからイキイキと具体的なエピソードが一気に展開する、という流れはよくあります。

何であれこちらから興味を示して、もっと話して欲しい、もう少し聞きたい、という意思表示をするのはとても重要」(中吉教授)

今回の講義で学んだことは、好奇心のその先にある、相手へのフォーカス。一方的な自分軸から抜け出して、相手軸で話の全体像をみる視点を持つこと。「キーワード」を拾って対話を深めながら、相手が心地よさを感じる話題やポイントを見つけたら、さらに踏み込んだ質問をしてみましょう。今までとは違う、手応えが感じられるのではないでしょうか。



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