講義レポート

「質問学」キュレーターの岡島です。第1期がスタートした8月1日は、新しい事を始めるのに良いとされる一粒万倍日でした。この日に蒔いた一粒の籾が、後に何倍の稲穂になって実りをもたらすという縁起の良い日。そんな記念すべき第1回目のレポートをいたします。

教授は、書籍編集者であり、出版エージェントの中吉(なかぎり)智子さん。世の中に数々のベストセラーを生み出した経歴の持ち主です。職業柄、いろいろな方にインタビューをしてきた経験をお持ちです。取材をする際には、「この人が本当に伝えたいことはなんだろう」とか「ここを掘り下げて訊いたら本質に迫れるかもしれない」と、あれこれ質問しながら情報やメッセージを引き出していくそうです。書籍づくりは、表面的ではない本質を探ることが最大のテーマ。今でこそプロフェッショナルとして活躍されている中吉さんですが、悩みながらトライ&エラーを繰り返し「質問力」を身につけてきたとのこと。ご自身の体験を交えながら、質問の可能性について語っていただきました。

次は受講生の自己紹介と思いきや、隣同士でペアになっての「他己紹介」タイム。受講動機を「質問」し合います。限られた時間のなかで、初めて顔を合わせた相手の情報や魅力をどれだけ引き出せるのか。笑い声の中にも、ほどよい緊張感を感じられる時間が流れました。そして、ひとりにつき1分間の他己紹介がスタート。受講生から挙がった志望動機はおもに以下のようなものでした。

・人に興味があるので、人の話を上手に聞いてあげたい。
・ 人と話すのが好きだが、相手に違った意図で情報が伝わってしまうのでよりよい表現ができるようになりたい。
・ 自分のことを上手く説明できない事に問題意識がある。
・ 本音を引き出し、心を通わせる会話ができるようになりたい。
・ 他人の魅力を引き出したい。
・クライアントの要求を上手く引き出したい。

これらの問題を解決する「質問力」をつけるために、中吉教授からアドバイスがありました。

「『質問力』をつける第一歩は、まず健全な好奇心を全開にすること。目の前の人に純粋な興味を持つこと。それは、自分自身へのフォーカスを手放し、対象や相手に100%フォーカスするということです」と中吉さん。「そして、まずは相手に玉を投げてみましょう。誰かが球出しをしなければ、会話のキャッチボールは始まらない。いくら最高のフォームを身につけても、球がなければラリーになりません」

「会話において陥りがちな2つのパターンがあります。自分に興味を持って欲しいがために、つい自分の事ばかり話してしまう人。逆に相手を受け入れてあげようとして、聞いてばかりになってしまう人。じつは、どちらも自分にしかフォーカスしていません。どちらも、『自分軸』から抜け出せていないのです。それに気づいたら、自分からリスクをとりましょう。
人は誰でも、自分に注目されたり興味をもってもらうのはとても嬉しいこと。だとしたら、まずは自分がして欲しい事を他人にしてみてください。そうすればいろいろな事が変わってきます。」(中吉教授)

意図がよく分からない質問や、一方的で気持ちを汲んでくれない質問をされると、答えに困惑してしまいますよね。また、本心からではないマニュアル的な質問は、なんとなく伝わってしまうものです。そんな経験って、ありませんか?

「この講座を受けている皆さんはぜひとも上手な会話の”球出し”を身につけて欲しい。みんなにスムーズに回る”いい球出し”が出来る人がいると、それだけで場の流れが変わります」(中吉教授)

質問力アップのための第一歩は、好奇心のスイッチをONにして、生活すること。そして、会話のきっかけになる”球出しボランティア”を自ら買って出ること。意識を変えて日々を暮らしたらどんな発見があったのか。次の講義まで実践して報告し合うことにしました。



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