こんにちは、「TOKYO着物学」キュレーターの花村えみです。今日は講義をつくるにいたった想いと、講義でどんなことを学べるのかをレポートさせてもらいます。
「~ねばならない」から自由になる
着物を着て出かけると、一気に周りの視線が集まります。着物に関するカロリーはまだまだとても高いことを実感する毎日です。しかし着物に関するTPOや季節の決まり事、着付けのハウツーが多すぎて、着る前に気持ちが萎えてしまう、ということを耳にします。果たしてそういったルールやハウツーというのは、この異常気象が続く、家の格の意味合いなども薄くなってきた現代において、絶対に踏襲するべきことなのでしょうか。そもそもそういったルールは誰が何故決めたのでしょう。
講義では、巷で言われているルールやハウツーを受講生みんなでピックアップし、そのルーツを調べていきます。実は「~ねばならない」と思っていたことは、誰かにとって「~したほうがいいのでは」といった推奨だったりすることに行き当たることが多くあります。理由を知ればルールとのいい距離感が生まれるのです。
街に馴染む、生き方に馴染む着物をきたい
譲られた着物を着ようと思っても、着物・帯・帯揚げ・履き物・バッグ、一式をそのまま身につけてしまうと、まるで昭和からタイムスリップをしてきたかのようです。また、着物=和のイメージが強すぎると、私たちの生活に和の要素がいまや少なくなってしまったため、日常の活動場所ではなかなか着づらくなっています。
私たちは今、街に馴染む、私たちの生活や働き方に寄り添う着物を着たいのです。そこで講義の最終回では、私たちが着物を着たいシーンを背景に設定し、自分の好きなテイストを入れた、着物スタイリングを行うということをします。
例えばこんなBarでは どんな着物が着たいですか?
好きなテイストを研ぎ澄ます
着物は形式的に平面が大きく、余白の大きな衣服です。この大きなキャンバスにどう自分の好きなテイストを入れていくか。
第三回目講義では、ゲストのキサブローさんの解説をもとに、各自でスタイルブックをつくっていきます。初めは私も『自分の好きなものくらいわかっている』、と思っていました。しかし改めて、好きな物の点と点をつないで可視化させてみると愕然としました。実はこのスタイルブックを作っていったことで、この夏は、はんなりいい女風浴衣の衝動買いを思いとどまることができました。私が求めている好きの方向性とあまりに違ったわけです。
さぁ実践!スタイリング
第1期では、着物を着たいシーンとテーマとして自転車・旅・Barという設定がでました。好きな物をとりいれつつのチームでのスタイリングです。着物と掛け合わすというテーマをもって街にでてみると、普段は見過ごしていた色々な物が目にとまります。例えば、この表参道は素敵な着物や小物のヴィンテージショップが多いです。また骨董市で獲得した粋な箸置きやワッペンは帯留めに加工。ポップな裂地を半襟にしてもいいですね。スタイリングしてみた着物コーディネートを海外でも着てみました、という嬉しい報告もありました。
この講義を受講する魅力のもう一つは、講義終了後も着物好きな仲間と、情報交換をしたりイベントに一緒に参加したりということができることでもあります。10月には少し遠出して大きな着物の骨董市に卒業生で行く予定です。着物ライフを始める仲間を募集しています!
Edit:花村えみ