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つる(水澤充)|FLY_025

"業"に縛られず、ちゃんと生きる

つる(水澤充|デザイナーほか)自由大学では「キュレーション学(初級)」「キュレーション学(中級)」「ナリワイをつくる」「キャンプ in 仙台」「神社学」を受講。勤め先を離れた後、受けた「キュレーション学(初級)(中級)」を経て、複数の授業でキュレーターを務めるようになる。2012年から2014年は自由大学の運営チームに。退職からフリーランスの道へと20代を駆け抜けた今、30代という10年をどう生きていくのか、つるさんに語っていただきました。


 

Q.自由大学に来た経緯(いきさつ)は?

2011年の夏に「キュレーション学(初級)」第2期を受けたのが最初です。当時、デザイン事務所に勤めていたのですが、働くのは深夜まで。約5年間、ほとんど休みもない生活をしていたんですよ。外に向けて発表するものを作っているのに、同僚、クライアント、近くのコンビニの店員と、限られた人としか会わないことに疑問を感じて、いろんな人と関わってみたいと思っていたんですね。

また、勤め先はデザインコンサルティングから制作まで多岐にわたる仕事をする会社だったので、案件によっては「もう少し前の段階から関われたら、もっと面白そう」と思うことも。それで、デザインから飛躍するものを身につけたいとも思っていました。

そんな中、2011年3月に震災が起きたタイミングと偶然重なる形で、翌月くらいに会社の解散が決まり、案件の整理期間になったんですね。その時期は割と自由に時間をつくることができました。その時期にTwitterで自分が興味を持った人たちをフォローしていったら、「キュレーション学、募集中」というツイートが流れてきたんです。募集ページを見てなんとなく、「キュレーションはデザインを飛躍させたもの、大きく捉えたものなのかもしれない」と思いました。

デザインには、たくさん案を出して、とにかく時間をかけて、そうしないと良いものはできないという雰囲気がある。確かに、粘ることは大切だけれども、とにかく時間をかけることが全てなのかという思いがあったので、いわゆるデザイン業を突き詰めるのではない、大きい枠で捉えて違う道を探すことも裏テーマとして持ちながら、授業に参加しましたね。

その後、つるさんは、自由大学の学生、キュレーター、運営と教授以外すべてを経験する。また2014年には、自由大学をきっかけに結婚も。

Q.自由大学に来て良かったことは?

生き方が大きく変わったということでしょうか、結婚したことも含めて。

ぼくが受講した、「キュレーション学」や「ナリワイをつくる」、キュレーターを担当している「東北復興学」や「神社学」は、自分をさらけ出さないと、核心に触れられなかったり自分の考えを言うことができなかったりするような内容だと思っています。あんまり、そういう場所はないじゃないですか。そういう場所だから、結果、いろんな仲間に出会えて、さらに結婚もできたんじゃないかと。同じ興味で意気投合して、というだけでなく、内側にあるものをお互いがさらけ出せる場所で出会ったから。仕事にも繋がっているし。

20代はいろんなことに手を広げる時期で、収拾がつかない状態までいったから、今は絞ろうと思えるようになりました。今は30歳をすぎて、次の10年で何をするか考えている時期です。

Q.何をしていきたいですか?

仕事や相手あってのことなのですぐにという話ではありませんが、都心にいなくてもいいのかなとは思っています。高い生活コストを維持するために、疲弊するというのもどうかと、ちょっとした疑問はやっぱりあるので。

「東北復興学」で、東北の現地で活動している方にゲスト参加してもらった際に、聞いた話が響いているのもあります。避難しているおばあちゃんから言われたことらしいのですが、「震災が東北で起きたから、山に逃げることができたし、畑にごはんはあったし、水も汲めた。これが都会で起きたらどうするの?」。それを聞いて、本当にどうするんだろうと。地方に住むことが全ての解決にはならないとは思いますが、いくつかの拠点はあっても良いのかなと思っています。

また、「キャンプ in 仙台」で畑をしたり、「食べたい畑をつくる」で湘南国際村に畑を作ったり、今も世田谷区民農園で借りて畑をやったりもしています。畑をやると、いろんなことがわかる。自分が食べるぶんの広さはどれくらいか、芽が出てきても雑草と見分けがつかない自分がいたり。それは普段、食べ物の初期状態を知らずに食事をしているということですよね。便利な部分もあるのだけど、ちゃんと考えたほうがいいんじゃないかなと感じています。

畑をやると言っても、世田谷では1ヶ月以上、放置している時もあります。カバーや、ハウスなどもないので、区民農園のベテランのおじさん達からは「何をしているんだろう?」と思われていそうですが、それでも収穫できるんですね。形はいびつだけど、ちゃんと美味しい野菜です。農家さんのようにきれいな形にするのは大変だけど、農業から業をとって、農なら意外とできるんです。

業とか肩書きとか仕事を中心に考えるよりも、ちゃんと生きること、デザインも、食も、ワインも、ビールも、ヨガも、神社も、東北も、畑も、全部まるっとひっくるめて、楽しんで行けたらと思います。

【編集後記】自由大学の運営チームを卒業して半年、今のつるさんが何をしているのか聞いてきました。世田谷の農園の話が特に印象的。イビツな形でも、1ヶ月半放置しても育つなんて面白い。まずやってみて、それでできるかできないか確かめることの面白さを話してもらった感じです。

(インタビューした卒業生: #新井優佑


 

FLY(フライ)は、自由大学の卒業生が登場するインタビューコーナー。自由大学に通い、新しく見つけた自分の姿。卒業して、踏み出した一歩は小さくても確かな手応えをもって、新しい日常の扉を押し広げます。卒業生が体験した、自分らしい転換期の話をお届けします。



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