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消費せずとも豊かな暮らしを。生きる力を取り戻したい

FLY_ 68|宮崎真菜さん/「地球に暮らす自給学」キュレーター

「自分には生きるチカラが足りない…」頻発する自然災害やコロナ禍の影響を受け、消費に依存した暮らしに危機感を持ち始めた宮崎真菜さん。地元静岡の市役所職員でありながら、新しいチャレンジを自らに課し『Lecture Planning学』の門を叩きます。スキルも経験もない初心者だと言いながらもハードルを1つずつ超え、ついにリリースした新講義「地球に暮らす自給学」は満員御礼に。キュレーターとして一歩を踏み出した背景をお聞きしました。

記念すべき新講義の初日終了後に。自由大学の屋上にて。


ー 『Lecture Planning学』の受講が新講義実現につながったそうですね。

はい。自由大学で講義をつくりたい人向けの講義が『Lecture Planning学』です。私は今年2020年3月に参加し、講義企画を練っていく中で行き着いたのが『地球に暮らす自給学』のアイデアでした。

そもそも『Lecture Planning学』を受講しようと決めたきっかけは、仕事以外の活動にもチャレンジして、ネットワークを広げたり、自分のスキルを増やしたりしたいと思ったからです。私は静岡県牧之原市の市役所職員なのですが、2019年4月から2年間、日本橋にある地域活性化センターに出向となって都内で働いています。東京の暮らしと仕事に慣れてきて、「せっかくだから新しいことに取り組みたい」と思っていたときに『Lecture Planning学』を知り受講を決めました。

 

ー 講義を受講してみて、どんな学びや出会いがありましたか?

同期メンバーは私を含めて6人でした。岩手県で市民大学を開いている方や、フリーランスの方など日常では出会うきっかけがない人たちと知り合うことができました。想像したより、みなさん講義を受講した目的とか、バックグラウンドが違い刺激を受けました。

私は自分で講義を作りたいというよりも、「お金をいただいて人の集まる場を開く」ってどうやるんだろう? と興味を持っていました。公務員という仕事柄、対価を得て何かをする経験が乏しかったので、そのスキルも身につけたいなと。最終的に講義化を実現できて、その過程でもたくさんの学びがありました。

「自分は何を探求したいのか」問いを定めるまでが苦労しました


ー 新講義をつくる上で難しかったことはありますか?

講義の企画から実施までのプランニングをおこなうのですが、なにより最初の「テーマ設定」が難しかったです。自分の「問い」や興味関心を掘り下げる中で「自給自足」というキーワードにたどり着きました。そこから具体的に掘り下げていくのも難しくて。講義を通して、誰に対して・何を・どんなふうになど具体的にしていくのが大変でした。

普段「ひろくあまねく」というスタンスで仕事をしているからかもしれませんが、物事を具体的に考えるのが苦手だなと自覚しました。ペルソナを絞っていき鮮明にイメージし、強いメッセージを届ける重要さを経験しました。

 

ー 今回キュレーターとして立ち上げた新講義『地球に暮らす自給学』について教えてください。どのようにテーマを設定したのでしょうか。

まず私の中の大きなテーマとして「暮らすことを丁寧に」がありました。関連するキーワードとして「農」「DIY」など。外部に依存する、消費するだけでなく、自分の手でなにかを作ることで「暮らしの中で生きている手応えを感じたい」という欲求が私の中にあることに気づきました。

Lecture Planning学』で講義テーマを設定するとき、無意識に今まで自分が経験してきた仕事や現在の環境に関連することから探していました。そうしたら教授の深井さんから「経験がなくてもこれから探求したいことはあるでしょう? 自分の興味関心を突き詰めればいいのでは?」とアドバイスを受けて、改めて「今の自分の課題とはなに?」「これから何を探究したいの?」と掘り下げていって辿り着きました。

コロナ禍の変化の激しい時代ということもありますが、公務員であっても組織に依存せず、自分自身の力を高める必要があると考えています。肩書がなくなった時にどう生きるか。その証明の一つが「自給自足できること」ではないかと思って。

 

ー 教授のあべゆかさんとの出会いを教えてください。

講義を作る中で、自分は「教授」というよりも、みんなの関心の種を育て「場」をオーガナイズしていく「キュレーター」が合っていると感じました。自給自足をテーマにしたものの教授のあてはなかったので、ウェブや知人のネットワークで探しました。興味のあるキーワードをひたすら検索して出会ったのがあべゆかさんです。長々と私の思いをしたためた企画書をメールしたら快諾いただいて。あべさん自身もライフスタイルを発信したいと思っていたそうで、タイミングが良かったです。

あべゆかさん、講義おつかれさまでした!


ー どんな学びの状況をつくっていきたいですか?

自給自足のライフスタイルは、深刻に考えなくて大丈夫。自分の出来ることから始められるという手応えを体感してもらいたいです。

あべさんとディスカッションしながら具体的な講義内容を固めていったのですが、正直な気持ちとして、テーマが決まった段階では「本当に自給自足の暮らしは可能なのか? 実践できるノウハウを伝えられるのかな」と確信がないままでした。それがあべさんと話す中で、「こうやればできるんだ」と形が見えてきました。

完全なる自給自足ではなくてもいい。半自給自足を目指して、できる小さなことを積み重ねていくのが大切で、それは誰でも始められると感じました。講義を通してそのステップをみなさんと共有していきたいです。

あべさんも受講生の方から学びたいと楽しみにしていて、教授やゲストが一方的に教えるという場ではなく、講義を通して学びを深め、私たちみんなが成長していく場にできると思っています。

消費に依存しない。同じ問題意識をもつメンバーが集まり、定員MAXでスタート


ー 今後こんな活動をしてみたいというビジョンはありますか?

まずはスタートしたばかりの『地球に暮らす自給学』第1期を成功させること。そして講義をやって終わりではなく、受講生のネットワークを大事にしていきたいです。繋がり続けて、応援しあえるような関係性を作っていくのが目標です。

私自身も学びたいテーマなので、等身大の立場で教授のあべさんや受講生とコミュニケーションし続ける仕組みを作りたいと思っています。来年の春に静岡に戻るので、まずは市民農園で野菜作りにチャレンジしたいですね。

地元でも学びの場を作りたいです。「決められたものを学ぶ」ではなく、自由大学のように「何を学ぶかを自分で模索していく」スタイルが面白いなと思っています。誰でも学べるし、誰でも教えられるということを学びました。周りを見渡してみると、先生っていっぱいいるなと気づけるようになりました。


ー 最後に、宮崎さんにとって「自由」とは?

自分で意思決定ができることです。社会で生きる中でいろいろな縛りはありますが、「自分で決めて行動できる」ことは自由だなと思います。


プロフィール
宮崎 真菜(みやざき まな)
地球に暮らす自給学」キュレーター / 市役所職員
1990年静岡県生まれ。子どもの頃から都会や海外での生活に憧れていたが、大学時代に起きた東日本大震災をきっかけに地域に目を向けるようになり、大学を1年間休学。愛媛県にある障がい者の雇用づくりに取り組むNPOと、秋田県にある若者のネットワーク作りに取り組むNPOにてそれぞれインターンシップで働く。そこでないものねだりだった自分に気付き、故郷の良さに目を向け暮らしていこうと決めて地元の市役所に入庁し、現在6年目。プライベートでは市民活動や繋がりづくりを楽しむ。2019年4月から2年間は東京の団体に出向中。頻発する自然災害や2020年のコロナ禍の影響を受け、衣食住の依存した暮らしに危機感を持ち始め、自由大学で講義企画を学ぶ『Lecture Planning学』を受講し、新講義「地球に暮らす自給学」を提案し実現。スキルも経験もない初心者なので、受講生のみなさんと共に暮らしづくりを学びたい。

宮崎さんが受講した講義:『Lecture Planning学

取材・文:むらかみみさと(オーディナリー/自由大学)



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