「お金を稼ぐことに縛られずに暮らしたい」
「半自給自足の生活にチャレンジしたい」
高速回転する消費社会、競争社会から少し離れ、「自給力」つまり「おカネに頼らなくてもよい生き方」を学べる講義です。
今の生活の中から、少しずつ「買わない、捨てない、自分でつくる」を実践。頭脳と身体、人のつながりを駆使した「地に足のついた暮らし」を取り戻すことを目指します。
暮らしを ”買う” から ”つくる” へ
行き過ぎた資本主義経済によるさまざまな社会問題から、いま「自分の暮らしを自給すること」の価値が見直されています。
災害や不作があると、社会不安でスーパーでは買い占めが起こります。お金があっても生活必需品が買えず、生活に困ってしまう状況に。こういう時に、私たちの多くが生物としての脆さを感じます。社会人になり給料をもらい、少しばかり「自立した大人」になったつもりでいましたが、いかに消費社会に依存していたか。生きる力のなさを痛感します。
もし、自分で食べるものをつくれたら…
もし、自分で住むところをつくれたら…
もし、自分の使うエネルギーをつくれたら…
お金を使って「消費」する視点から、時間と体力を使って仲間とともに「自給」する視点へ。そんな自給視点をちょっとでも日常の暮らしの中に取り入れることで、生き方の選択肢が増えます。

競争から降りて、生きる実感を取り戻す
衣食住、そして趣味、ストレス解消など、ほとんどすべてを買い物に頼っている私たちは、お金がいくらあっても安心できません。
・高コスト生活⇨ 仕事が辞められない⇨ 我慢して働く⇨ ストレス解消のための消費
この負のループから抜けられないからです。識者の未来予測によると「日本はもう経済成長しない」にもかかわらず。「無理して頑張って働いて、もっとお金を貯めなくちゃ生きていけない」という呪縛は依然として強力です。「少しでも出世競争からつまづいてしまったら、いつ社会から淘汰されてもおかしくない」と常に恐怖心を抱えている人は多くいます。
しかし、本当にそうでしょうか? 一歩だけ社会から距離をとり眺めれば、「本当に大切なものは地位やお金ではなかった」ということに気づくのではないでしょうか。
自給率をあげれば、人生の選択肢が増える
自給率をあげれば、低コストでも生活できます。そうなれば、喜びを感じなくなった労働から自分を解放してあげることもできます。住宅ローンを返済するためだけに、精神をすり減らす仕事にしがみつく必要もありません。心のおもむくままに、喜びがあふれることを。生きかたをもっと自分で決められるような、創造性を発揮できるような選択肢をとれるようになります。
似合っていない働き方を捨て、安心できる暮らしを考えましょう。大事なのは「選択肢は他にもたくさんある」と思い出すこと。「お金がないと生きられない」は、これまでの社会が創りだした幻想にすぎません。

DIYは家事の延長。暮らしそのものを味わい尽くそう
「自給的な暮らし」とひと言で言っても、十人十色。それぞれ環境は違うし、個性や好みがあります。
「手づくりDIY生活は難しそう」という人も、「家事の延長」だと考えてみましょう。家事が大好きで、「暮らしそのものを味わい尽くすために生きたい」という人にはぴったりの生き方だと思います。
もちろん現代っ子の私たちには「完全な、100%自給自足」はハードルが高すぎます。それでも「自分が食べたいもの+アルファ」くらいのゆるい感覚でなら、太陽、木、水、石、土、火、微生物…を使って、やれることはいくらでもあります。
ようは、やるかやらないかだけ。達人たちの生活をのぞくと、生きるためのほとんどのモノを、自分たちの手でつくり出せることに驚くことでしょう。
例えば… 小屋づくり、古民家の改装、モバイルハウス、家具、土間、竹ハウス、自給菜園、畑を耕して食べものを作る。落ち葉堆肥づくり、野草、ハーブ、木の実を採集、養蜂、にわとりの卵、麹や味噌、蒟蒻、ヨーグルト、保存食、ヤギなどの家畜、ワイン、クラフトビールづくり、ピザ窯、囲炉裏、薪ストーブ、電気などエネルギーを自給する、水道、水路、水を引く、浄化する、太陽光発電にバイオトイレ、五右衛門風呂、石鹸、洗剤、化粧水、歯磨き粉などの日用品、衣類の藍染め、草木染め、薬草茶、薬に頼らない治療法、などなど。
初心者でも、やればできることはたくさんあります。今回の講義でこれらすべてに取り組むことは時間が足りないのできませんが、まずは、生活コストの大きな「居住費、食費、光熱費」を少しでも自給できないか考えていきます。

お金や組織からちょっとだけ独立してみる
一人きりでは自給自足は難しい。「誰かと協力し合わなければ成り立たない」のが自給的なライフスタイルです。それゆえに、社会や暮らしの中で自分がどこを担いたいのか、つまりは「自分が暮らしの中で大切にしたい部分、時間をかけたい部分」が見えてきます。
得意なテーマ(例えば家具をつくるなど)を突き詰めるも良し。苦手なテーマは、まわりの人と助け合い、物々交換でやっていけばいい。
「極力、他人と関わらなくてもひとりで生きていける」そんな現代社会のライフスタイルとは、正反対。気がねなく隣人に助けを求めるコミュニケーションも必要になってきます。
コミュニケーションに苦手意識がある人も多いと思いますが、贈与や交換は、人間の本質とも言えるもの。地域の中で支え合う暮らしづくりは、都会生活で分断されたコミュニティの中で生きるよりも、より心豊かな交流ができるはずです。

すべては「ちょうどよい暮らし」をつくる冒険だ
ストイックに「完全なる自給自足」を目指すのではなく、気負わず楽しめる範囲でいきましょう。目的は「幸せな人生」であり、「自給自足」はそのための手段のひとつでしかありません。
まずは「今より少しだけでも家庭内自給率を高めよう」という意識でかまいません。上手に、きれいに、かっこよくやらなくても大丈夫。身体を動かすのは単純に気分がいいし、大好きなハーブが収穫できたら幸せ度が上がります。
自給力の話をすると、毎回こういう心配ごとを耳にします。
「東京の狭い部屋で自給自足は難しい…」
「仕事が忙しいから…」
「不器用だから自信がない…」
「家族がいるから…」
「今さら原始人には戻れない…」
しかし、どんな環境であろうと、「精神的な自給自足」がポイントです。
たとえ都会のマンション暮らしでも、「ベランダ菜園」「保存食」からでも、ひとつずつ依存を解いていくことはできます。生きかたを問い、ちょうどいい塩梅を模索するには時間がかかるもの。家族をふくめ「このレベルまでは無理だ…」と限界を知るのも学びですし、各人にとっての「ちょうどいい」は生活しながら自ら試行錯誤するものです。

幸せは「憧れられる暮らし」の中にあるわけではない
現代人は、いくら憧れのモノを購入しても、満たされない何かを感じています。承認欲求のために見栄を張っても、幸せを感じることができません。
幸せであるために、私たちは別に「誰かに憧れられる暮らし」をする必要はありません。手づくりDIY生活で創造性が満たされてくると、不思議なほど消費欲が静まる人が多いです。
「自分にとって本当に価値あることとは何か?」
目に見えない価値に気づくことが、幸せな暮らしの第一歩だと思います。
自分の手で暮らしをひとつでも一からつくってみたとき、どんな世界が見えるのでしょうか。きっとこれまでの都会暮らしでは感覚的距離があった自然が、少し身近になってくるはずです。
自然からの恵みを栄養としていただき、いただきものや身近な素材をとことん活かす。余った物は保存食やおすそ分けで循環させ、来年につなぎます。自然の恵みに感謝し、自然と共に生きていくことができることに気がつけば、より豊かに生きて行けるのではないでしょうか。

<教授あべゆかさんからのメッセージ>
自分でつくる「自給的な暮らし」には、日々発見がいっぱい
飼っているヤギが小屋から逃げ出したり、廃材を手に入るために朝から晩まで解体作業をしたり、畑で採れたトマトを大量に干したりソースにして保存したり。上手くいったことも、失敗したことも、現在挑戦していることも、たくさんあります。
「地球に暮らす自給学」では、「楽しむこと」が本当に大切だと思います。お金をかけずに自分で暮らしを自給するということは、つまりその代わりに時間と手間がかかる。効率よく作業することも一つの生活スキルです。たくさんある暮らしの「自給」仕事、かぎりある一日の時間。毎日あっという間の中で、自分の手で暮らしをつくっていく面白さは、お金には代えられないなあと日々実感しています。この講義を通して、自分で暮らしをつくる自給的なライフスタイルの第一歩を一緒に踏み出せたら嬉しいです。
(第6期募集開始日:2024年10月1日)