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尾道ライフ 都会でも故郷でもない地方に暮らす

FLY_60|後閑麻里奈さん/foo chocolaters / GRRRDEN & Kiss Your Grrrden Organizer

photo & costume by Atelier Antwerp

2013年に「尾道自由大学」が開校して以来、自由大学と深い縁のある広島県・尾道市。海と山に囲まれた自然豊かな町は、広く関心を集めています。働き方、暮らし方の価値観がより多様になる中で、地方に暮らす選択をする人も増えています。今回、大学卒業を機に尾道に移住した後閑さんにお話を伺いました。


 

尾道に移住されたきっかけを教えてください

移住を決めたのは、大学を卒業する春でした。はじまりは4年生の春休みに、尾道に2ヶ月間滞在したことです。東京の大学に通っていたのですが、私は群馬県の田舎で生まれ育ったので、都会の生活に慣れきれない部分がありました。社会に出てからも東京でこのまま暮らし続けるのは自分に合っていないなと感じていました。故郷とはまた別の場所に住みたいなと思っていたときに、尾道という場所に偶然出会ったんです。尾道は海も山も近く、暮らしやすい、「ちょうどいい」町だなと思ったのが移住の決め手になりました。また、尾道に滞在した2ヶ月の間にいろいろな人と出会う機会があったのですが、新しいことを始めようとしている人や、面白そうなことをしている人、自分たちの好きなペースで働いていたり、暮らしたりしている人が沢山いることを知りました。そんな尾道に住む人たちに魅力を感じたのも、尾道で暮らそうと思った理由のひとつです。

 

大学では英米文学を学んでいて、アート・デザイン関係の会社でアルバイトをしていました。企画を考えたり、国内外のアーティストへのインタビューを担当したりしていました。また、海外のインディーミュージックが好きで、チームでDJをさせてもらうこともありました。年に一度は海外へ一人旅に出たり、尾道と出会ってからは尾道と東京を往復する生活を送っていました。最初はなんとなく「移住したいなあ」ぐらいの思いでしたが、卒業の1ヶ月ほど前に、就職先も決まっていなかったので移住しようと決めました。その勢いで仕事と住まいを見つけたので準備期間は1ヶ月くらいです。移住しようと決めた当時は、特にやりたいことが決まっていたわけではないのですが、都会にいるよりここにいた方が面白いことを始められそうだなと思って尾道で暮らすことにしました。知り合いや友人から情報を集めて生活をはじめて、移住してからすぐの約1年間は、尾道からフェリーで45分のところにある百島という離島でアートプロジェクトに関わっていました。仕事内容としては、作品の解説をはじめ、年に一度の企画展に向けて、国内外のアーティストを招聘して視察やインタビューのアシストを行ったり、情報発信や島民の方々と協働で行事を開催したりしていました。現在はまた尾道の町で暮らしています。

尾道の風景

 

現在どんなお仕事や生活をされているのか教えてください

今年(2018年)の2月に、広島空港内にチョコレート工場を立ち上げる予定があり、今はそれに向けて毎日準備をしています。自分の思い描く理想のチョコレート工場を想定して、チョコレートの形や味、ロゴやパッケージの考案、制服や内装についての決定などに関わっています。既存の工場の概念ではなく、品があって凛とした空間で、楽しくチョコレートを作りたいなと思っています。毎日朝早く起きて日が沈む頃に仕事を終え、夜には好きなことをして過ごしたり、珈琲屋さんにいて、その時に会った人と話をしたりしています。また、個人的に開いているGRRRDENという女性・クィア・トランス・ノンバイナリーの人たちが安全で主体的に楽しめるDJイベントの準備やzineの制作、Kiss Your Grrrdenという名前で展示販売しているパンツを作ったりしています。

 

尾道で暮らすことについて、移住前は都会にいるよりもゆったりした生活になるだろうな、と思っていました。でも私自身がいつも何かしていたい!というタイプなので、「地方暮らし」という言葉からイメージするようなゆったりした暮らしではないです。ですが尾道はすぐ近くに海や山があるので気分転換もでき、バランスが保ちやすくとてもいい環境だなと思っています。また、誰かと待ち合わせるということが減りました。通りを歩いていると誰かしら知り合いに遭遇したり、お店やイベントでも顔を合わせるので、約束しなくても会うことができます。尾道には移住者も多いので、比較的外部の人間に寛容な町だと思います。町の大きさもちょうどよく、自然もあって、何かあればコミュニティで協力する文化があるので安心感があり、暮らしやすい場所だと思います。

もちろん大変なこともありました。特に、離島での生活は想像以上に過酷で、毎日虫と格闘したり、帰り道にたぬきやイノシシに遭遇することもありました。また、アメリカ人やフィリピン人の女の子と生活していたので日常的に英語を使う機会もあり、「日本の離島で暮らす」という言葉からイメージするよりも多様な経験をしました。

このまま定住するのかどうかはまだ分かりませんが、他に行くあてもないので、しばらくは尾道で暮らそうと思っています。その時が来たらどこか他の場所へ動くかもしれません。

 

56 cafeにて離島で一緒に暮らしていたJuliaと。現在はKiss Your Grrrdenのパートナー。

 

自由大学との繋がりを教えてください

東京に住んでいたときに、世田谷ものづくり学校で開催されていたイベントに足を運んだことがあり、ちょうど尾道自由大学のオープンに合わせた説明会をしていて、自由大学と尾道について初めて知りました。偶然入り口で声をかけられて、時間もあったので説明会を聞いてみることにしました。当時大学3年生で、卒業したらどうしようかな、と思っていたところだったんです。就職活動期間だったのですが、尾道に行ってみた方が面白そうだなと思って、春休みの2ヶ月間、尾道の向島という場所で暮らしながら尾道自由大学のアルバイトをすることにしました。尾道の町を歩いて撮影した写真をアルバムにしてFacebookで公開したり、講義を組み立てるまでのお手伝いや、実際にアシスタントとしていくつか講義にも出席し、レポートを掲載しました。現在は直接自由大学との繋がりはないのですが、自由大学での活動を通して繋がった人たちとの繋がりは続いています。

 

今後チャレンジしたいこと、関心のあることなど教えてください

まずは、新しいチョコレート工場を楽しく魅力のあるものにしていきたいと思っています。尾道で主催しているGRRRDENというパーティーも定期的に開催しながら、ハンドメイド・アンダーウェア・プロジェクトKiss Your Grrrdenも進めていきたいです。Paraiso Coffeeのマスターと共同でやっている Virgo Stingrayというショップも少しずつ機能していったらいいなと思っています。

 

最後に、後閑さんにとって「自由」とはなんでしょうか

縛られている環境や状態から解放されて、咲いている花を想像します。自分の感覚に従ってそこに存在していて、それぞれが持っている多様性が否定されることがなく、自然に調和している状態なのかなと思います。


プロフィール

後閑 麻里奈 (ゴカン マリナ)
foo chocolaters / GRRRDEN / Kiss Your Grrrden / Virgo Stingray

東京での大学生活を終え、そのまま尾道へ移住。移住後約1年間離島で暮らし、再び尾道のまちへ拠点を移す。女性・トランス・クィア・ノンバイナリーの人々に向けたDJパーティーGRRRDENを主催しながら、昨年からハンドメイド・アンダーウェア・プロジェクトKiss Your Grrrdenを始める。zineを中心としたショップ Virgo Stingrayを尾道の珈琲屋paraiso coffeeにて展開。2月から広島空港にオープンするチョコレート工場 foo chocolaters の工場長を務める。

 

文:むらかみみさと(ORDINARY



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