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草木と手仕事の智慧があれば、都市でも循環型ライフスタイルは可能です

FLY_ 69|石田紀佳さん/「実践!アーバンパーマカルチャー」教授兼キュレーター

幼少のころから草木に魅せられ「ぜんぶ自分で作ったもので暮らすのが夢だった」という石田紀佳さん。現在は、アーティストの展覧会を企画するいっぽうで、暮らしの中でできる季節に沿った手仕事を実践、紹介するお仕事をされています。

持続可能な都市菜園づくりを探究する自由大学の講義「実践!アーバンパーマカルチャー」では、教授とキュレーターを兼任。今回は2021年2月から新たに「9ヶ月プログラム」を始めることになった背景なども伺いました。

 

石田紀佳さん

コミュニティランチの片付けを終えて。エプロンをつけたまま、にこやかに取材に応じて下さいました。自由大学の教室にて

 

自由大学との出会いは?

IID世田谷ものづくり学校で「緑化ディレクター」をやっていたので2009年頃から、自由大学のことは知っていました。具体的に関わりを持ったのは「実践!アーバンパーマカルチャー」の教授であるソーヤー海さんに声をかけてもらったのがきっかけです。

表参道にあったライフスタイルショップ「かぐれ」の一角に「街野原」の庭を作ったんです。それを見た海さんから一緒に講義をつくってくれないかと誘われて、講義の3期目から関わりはじめました。

 

キュレーターとして加わった動機や感想は?

当時はパーマカルチャーへの世間の関心が高まりつつある中で、私は東京で暮らしながらも、持続可能な文化を実践していきたいと思っていました。海さんの活動や目指すものを全部は把握していませんでしたが、「都会こそ緑を作ろう」という考えが一致していたんです。海さんは当時から持続可能な生活の研究者として知られていて、講義づくりを通して私も彼の取り組みについて学び、共感して、理解するようになりました。

「田舎で自給自足の生活をすること」を目的とするわけではなく、「地球全体で自給自足していく」のがアーバンパーマカルチャーの考え方。私も縁があって都市に暮らしていますが、都市が変わらないと人間が自然に及ぼす影響はかわりません。どうやって人が集まって協力して文化を創造していくのか、都会のありようは未来にどうなるのか、は都市に身をおかないと切実に考えられないところがあります。しんどいこともありますけどね。

だから、都会を変える原動力のためにもオアシス的な自然の息吹を感じる空間をつくる必要があると考えています。都会は、人というエネルギーにあふれているし、人間がつくったものつくってしまったものをどうするか、どういうものを人間はつくっていくのか、という考える材料だらけです。わたしの場合は自分が田舎だけにいたら、そういうところは見たくなくなるかもしれません。

ソーヤー海さんと石田さん

ソーヤー海さんと石田さんがレクチャーする講義のひとコマ

 

教授のソーヤー海さんと石田さんの違いとは、具体的にどんな点でしょうか?

価値観の根っこや目指すところは同じだと思いますが、そこに至るアプローチは異なる部分があります。役割や得意分野が違うからこそ、バランスが良いと思います。海さんは大きなビジョンを示すのが得意で、多くの人を惹きつけ、鼓舞する能力を持っています。私には彼のようなやり方はできないです。

実際に植物に触れて、手仕事を通して地道に伝えていくことしかできません。もちろん海さんのほうが得意な実践的な技術や智慧をもっていますが、お互いに違う役割があることをわかりあっています。海さんは相手を尊重して仕事を進めていける人で、そこが「平和」につながるのではないでしょうか。(千葉県の)いすみ市に「パーマカルチャーと平和道場」を持っていますが、そのような場を運営しているところも海さんらしいアプローチだなと思います。

私は芸術系の大学を卒業したのですが、創作活動の中では土や木、植物などを素材として扱っていました。綿や藍など。パーマカルチャーを知る前から「地に足をつけたい」という思想があり、自然と繋がりながら暮らしたり、活動したりすることが好きなんです。

 

屋上菜園

講義で育てている屋上菜園にてランチ休憩。表参道の都市のスキマでもできることは多いとメンバーに伝える石田さん(左端)

 

東京・表参道でパーマカルチャーの講義を開く意義とは?

パーマカルチャーは、パーマネント(永続性)と農業(アグリカルチャー)、文化(カルチャー)を組みあわせた造語です。人と自然が共に、持続可能な豊かな暮らしをすることを目的としています。
定義を知ると、東京は実践の場として真逆ではないかと感じる人もいるでしょう。しかし都市と田舎という二極的な対立を起こす必要はないと思います。都会の暮らしに限界を感じる方もいれば、東京で暮らしながら自然を感じて生きたい方もいます。

実際に、東京はすべてがいわゆるコンクリートジャングルではなく、大きな公園など自然もあります。自由大学から歩いていける明治神宮も、エネルギーに溢れた森ですよね。いま自分ができることからはじめることが重要だと思います。

 

講義ではどんなことを大切にしていますか?

How to のみを教えるのではなく、身を持って実践することを大切にしています。パーマカルチャーの起こりや理念を知った上で、どうやって実践していくのか。続けていくとどうなるのかを体と感覚で学んでいただきたいです。

実際に、卒業生の多くは自分なりのやり方でパーマカルチャーを続けていますし、地方へ移住した人もいます。講義は始まりですので、終了後に自立していけるように、コミュニティとして支え合えることも重視しています。

現在、みどり荘(自由大学も教室として使用することもあるコワーキングスペース)で毎月1回コミュニティランチをおこなっています。入居者や関係者など、ランチの時間に交流するイベントですが、この運営には東京から離れても関わり続けてくれている卒業生もいます。

 

コミュニティランチの準備中。講義の卒業メンバーが一丸となり連携プレー

コミュニティランチの準備中。講義の卒業メンバーが一丸となり連携プレー

 

ZINE

都市菜園づくりから、料理、コミュニティの楽しみをまとめたZINEも発売し好評

 

パーマカルチャーを学び実践することで、どんな変化が期待できますか?

受講される方は、現代社会の仕組み、消費社会に疑問や行き詰まりを感じている方が多いです。自分はこのままでいいのか、どう生きるべきか問いを持っている。講義に参加したら答えが見つかるわけではありませんが、パーマカルチャーの考え方を学ぶことで、海さんが強調する「資本主義とは異なる、別の経済が成り立つ可能性」へと視野を広げたり、価値観の変化を体感するかもしれません。

パーマカルチャーは決して、いま暮らしている社会を否定することではありません。偏狭的な思想でもありません。共同社会とは? 自然の営みとは? など疑問を持ち、農業だけでなく、生物学、経済学、社会学など必要な知識が多くあります。

パーマカルチャーを実践していくことで、さらに気づきや疑問が生まれてきます。学びを継続することで、社会との繋がり方や見え方も変わっていくはずです。

 

全5回の講義から、今年は「9ヶ月間の継続性の高いプログラム」で募集することになりました。どんな学びの変化を期待しますか?

これまでの5コマではパーマカルチャーの基礎編を伝え、実践は受講生それぞれがご自身で、となっていました。今回は一定期間一緒に手足を動かし実践していくことで、学びは深まると考えています。まだ寒い時期の春から秋まで季節を一巡し、四季を感じることでより地球のリズムを感じられるでしょう。都会の校舎の屋上でも実践できることで、気づきや自信が生まれると思います。

Problem is a solution がパーマカルチャーの精神です。問題があったら解決する。失敗も含めて経験にして、継続することが重要です。それを長期プログラムを通してより具体的に伝えて、皆で探っていけることが楽しみです。長期になると、受講した人たちとの間から生まれる予期しない学びもおきますからね。

 

パーマカルチャー初心者は、まず何から始めればよいでしょうか?

おうちでコンポストがおすすめです。自分が廃棄しているものを可視化でき、どのように自然が循環しているのか手軽にわかります。ベランダ菜園も最初の取り組みに適していますね。上手く育たなかったり失敗するかもしれないけど、それも含めてチャレンジする価値があります。命の循環を間近で見ることで、自分の暮らしを観察し、違う角度から見られるようになります。

パーマカルチャーのゴールは「継続すること」です。今までの人間の営みや経済活動に疑問を持ち、それが学びのキッカケになります。できることから試して学んでいってください。

 

石田さんにとって自由とは?

難しい質問ですが、生きていることが自由だと思います。たくさんのモノたちと生きていることが、すでに自由ではないでしょうか。

ありがとうございました! 現在募集中の講義も、申込みが集まっています。新しい取り組み、楽しみにしています。

取材と文:むらかみみさと

 

<プロフィール>
石田紀佳氏 (キュレーター、手仕事研究家)
1965年生まれ。東京芸術大学美術学部卒業。企業の製品企画部門などを経て、フリーランスのキュレーターに。展覧会企画、執筆、手仕事の材料となる植物の育成を通して、美術手工芸品を紹介している。東京の自宅と神奈川県の里山とを往復し、 半自給自足の暮らしをしながら、「自然と人と技術=魔法」について実践考察中。「 新しい自分になるマーマー☆スクール」にて講師を務め、自然と手仕事の豊かさを暮らしに取り入れることを目的としたワークショップ形式の「魔女入門講座」は、実生活に役立つ発見に充ちていると好評を博した。植栽プランに、ニッケコルトンプラザ「手仕事の庭」、かぐれ表参道店「街野原」、世田谷ものづくり学校の「巡る庭」など。旧環境省のエコロジー教育のためのサイト(現EICネット)「この指とまれエコキッズ」のコンテンツ執筆。著書に『藍から青へ  自然の産物と手工芸』(建築資料研究社)、『草木と手仕事』(薫風堂)、『魔女入門 暮らしをたのしくする七十二候の手仕事』(すばる舎)。
「草木と手仕事」のインスタグラム instagram.com/kusaki_to_teshigoto/

<石田さんを知る取材記事>

植物と暮らす おうち時間 / 植物生活
https://shokubutsuseikatsu.jp/article/news/p/7009/

里山で始まる、気持ちのいい一日 / 天然生活
https://tennenseikatsu.jp/_ct/17353605

先人の知恵と残したもの大切に受け継ぎ、今に接ぐ/100%LIFE
https://100life.jp/style-of-life/25573/



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