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賢明な選択だけが、生命を輝かせるわけではない / 深井次郎

学長より新年のごあいさつ

「良い年にしよう」そう誰しも年初に願うもの。あなたにとって、これまでの人生で一番良い年だったのはいつでしょうか。

「人生で一番輝いていた時代はいつですか?」

そうたずねると、賞を獲ったり、昇進したり、大きな仕事の成功をあげたり、結婚、出産など嬉しいライフイベントの時期をあげる人もいます。しかし、そういうきらびやかなハイライトをひとしきり挙げると、静かに心の奥を探るように押し黙ります。ゆっくり口を開き、こんな答えが続く。

「そう、あの年は、とにかく大変だった。どん底だったけど全力で駆け抜けたなぁ」

辛い体験のほうを懐かしく、そして愛おしそうに語りだすんですね。

もちろん、渦中にいるときは、「もう2度とこんな辛い思いはしたくない」と思っています。

でも月日が経ち、乗り越えた後は、その大変な時期こそが輝きだす。あの時期があったからこそ今がある、と大切に思えるのです。楽しい思い出よりも、大変だった思い出こそ、生き生きと懐かく語るんですね。

当時賢い選択をして、無難に過ごした日々のことはまるで空白のよう。なかなか思い出せないものです。周りから「馬鹿げてる」と止められるような選択をしたり、辛い目にあった事件はよく思い出せる。

いま幸せ絶頂な人も、反対に大変な人もいるでしょう。どちらだとしても、長い目で見ればきっとそれは「良い年」です。

自由大学の運営は、2019年は「守」の年でした。運営の内側としては、自由大学10年間でも大きな変化が起きた年でした。特に何も変わったように見えないと思う方も多いかもしれません。外見上、そう見えていたとしたら、本当によかった。教授キュレーター、運営チーム、古くからの受講生たち、みなさんの献身が報われたと思います。守りたい大切なものを守ることができた、という点、それが2019年の全てでした。

基盤を整えて、2020年は、前向きな取り組みに転じることができます。誰も答えをもたない時代、これからもみんなの興味や問題意識から、自由に学びの場をつくっていきます。

人生の学びは一生続きます。新年もまた、自由大学でご一緒できたら嬉しいです。明けましておめでとうございます。

2020年 元旦
自由大学 学長
深井次郎



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