クリエイティブチーム日記は、毎週火曜日にクリエイティブチームのメンバーが交代で書く日記。今週は、岩井謙介です。
近況報告をしますと。
6月25日(土)26日(日)に開催するNordic Lifestyle Marketで発行する北欧ライフスタイルマガジン「a quiet day」の取材のためにゴールデンウィーク明けから2週間北欧を周遊していたり、昨日リリースした「クリエイティブ都市学ー北欧学」のゲスト調整のために、本当に色々な北欧の方たちと話をする機会が多くある毎日を過ごしています。
昨日もデンマークの方とそんな打ち合わせを食事をしながら行っていたのですが、どうやらその方が強く感じることが「日本人は正解を求めすぎている」ということ。
例えば山登りをするという時を考えてみてください。
多くの人が登山グッズを新調して登ったりするのではないでしょうか。
その点においてデンマークの方はあるもので準備をするそう。
きっとそれだと足りないものもあるだろうし、ちょっと不便なこととが出てくるのだと思います。
けれどそういった時でも工夫をして楽しむことに考え方を変えていくと話してくれました。
ある種の制約がクリエイティブを発揮する一つのきっかけになるのだろうなというエピソードです。
今日は、もう一つエピソードを紹介したいと思います。それは、デンマークのシェアの考え方についてのお話です。
こちらは次号の「a quiet day」にも掲載予定の記事ですが、特別に先にお伝えします。
ちょっと長いかもしれませんが読んでみてください。
かつて都市の中のコミューンであったchristianiaから徒歩約5分ほどのところに、Paper Island(Papirøen)といわれる島がある。運河に囲まれたこの島は、政府の情報や資料などを印刷するための工場、そしてそれらを保管しておく倉庫群として古くから活用されていた。運河沿いに工場や保管庫を作った理由は、その当時、船舶での物流がメインであったためだ。
しかし世の中は移り代わり、情報媒体も紙からデジタルへ進行していくと、その場所の役割自体も次第に薄れてきてしまう。
そこでこの島の活用に目をつけたのが、コペンハーゲン市と建築家・ステートアーキテクター。彼らは”食”、特にストリートフードやファッションカルチャーで島を再活用しようと動いた。
時を同じくして、コペンハーゲンのNOMAというレストランが世界一のレストランに選ばれた時期でもあり、政府としても”食”に関する起業家を増やして支援していきたいという背景があったそう。ただ食で起業をするとなると、施設費用、人件費、広告宣伝費などと費用がかさんでしまうのが常。この課題に注目し、費用の多くを占める場所をシェアすることにより施設費用の圧縮ができるほか、同じ空間をシェアすることで宣伝効果も期待できる。そうしてPaper Islandに生まれたのがCopenhagen Street Foodなのだ。
Copenhagen Street Foodを目指し、Paper Islandの敷地に入ると目に入ってくるのが、HENRIK VIBSKOVというファッションブランドのガレージセール。色鮮やかでファッショナブルなそのブランドは、長年著名なファッションデザイナーがあまり生まれてこなかったデンマークにおいて、ファッションシーンを牽引している一つのアパレルブランドである。ガレージセールを通り抜けると、倉庫群の前の屋外で食事や会話を楽しむ人だかりを見つけることができるだろう。
そう、ここがPaper Islandで2017年までの期間限定で常設されているCopenhagen Street Foodという施設だ。中に入るとは所狭しとフードカートが立ち並び、メキシコ料理やイタリア料理、韓国料理に日本料理などと、様々な世界のジャンルのストリートフードを楽しむことができる空間になっている。
ここで出店している”食”の起業家たちは、2つの権利を手に入れることができる。一つは施設費用をシェアできるということ。そしてもう一つが、このPaper Islandの活用方法について意見できるというもの。期間限定のCopenhagne Street Foodの終了後のPaper Islandの活用方法について、自身の特技や価値を提供することも可能なのだ。
自分の取り分だけを考えるというマインドではなく、主体的・自律的に街づくりに参加し価値を還元していく姿こそが本当のシェアのあり方なのかもしれない。