クリエイティブチーム日記は、毎週火曜日にクリエイティブチームのメンバーが交代で書く日記。今週は岩井謙介です。
加賀百万石。皆からそう言われてきた土地、石川県金沢市。
今月の上旬1泊2日という短い時間であったが、本の編集の仕事でこの地、そして北陸地方に生まれて初めて足を踏み入れた。
そこで、ある料亭宿の主人にインタビューをした時のエピソード。
そこで、この土地の食文化のような部分を伺ったところ、料亭ならではの視点で「食」に対する成り立ちなどを教えてくれた。
古くから中国や朝鮮の大陸の食文化が日本に入ってくる玄関口として金沢という地は栄えた。また、時代が移り変わるにつれ、陸路の他に「北廻船・南廻船」といったような海路での物流の経由地にもなっていたそうだ。その影響もありもともと近接する朝廷のある京文化や京料理の影響を受けていたが、江戸時代になると加賀料理が藩主や幕府への献上料理として認められるようになり、さらに東の食文化の影響なども多分に受けて来たとのことだった。
けれど一つだけ彼らが京と東の食文化と一線を画す部分として、料理長はじめ口を揃えて主張するのが、醤油の味。九州の甘い醤油と関東をはじめとする塩辛い醤油のちょうど中間の甘塩っぱい味なのだそう。
こういった流派の入り混じるところに独自の文化が育っていくのは必然で、それは日本に限ったことではないはずだ。ましてや戦争などで、昨日までの国が今日からは異国の地となった場所は、過去を遡ればたくさんある。例えば、かつてデンマーク領でもあったことのあるスウェーデンのマルメ。そして戦争などによって、ドイツとフランスに国境が何回も塗り替えられたストラスブールなどが顕著であろう。
とはいえ、いくらお上の国や制度が変わったからといって、その地で生活している人の人格が丸っきり変わってしまう訳ではない。特に人が口にする「食」という部分については顕著であろう。ゆっくりとゆっくりそれは入り混じっていき、そこからオリジナルが生まれてくるのではないだろうか。
白黒つけずに微妙な色の変化を楽しむ。
それが文化ということなのかもしれない。