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クリエイティブチーム日記vol.22「lactation consultantという仕事」小酒ちひろ

毎週火曜日にクリエイティブチームのメンバーが日々のできごとを綴ります

クリエイティブチーム日記

クリエイティブチーム日記は、毎週火曜日にクリエイティブチームのメンバーが交代で書く日記。今週はNYから小酒がお届けします。

lactation consultantという仕事

産後、母乳トラブルに見舞われて初めて受けた母乳コンサルティングが、なんともフラットな雰囲気で目から鱗な体験だったので、お世話になった母乳コンサルタントのニッキー香月さんにインタビューに行ってきました。

母乳コンサルタント、英語でラクテーションコンサルタントは、アメリカ発祥の国際資格。科学的根拠に基づいて、母乳育児を支援してくれます。それは具体的にはどのようなことなのでしょうか。

母乳育児では母乳が出る仕組みなどを医療の面から理解することがとても大切なんです。妊婦さんに対して母乳が出るメカニズムをお伝えする講座をやったりもしています。産後のコンサルティングでは、精密な体重計を使って赤ちゃんがどれだけ母乳を飲んでいるかを図ります。数字だけではなくて、赤ちゃんの日ごろの様子やお母さんの健康状態をヒアリングしたりします。そうすると、クライアントさんの母乳育児の状況が見えてくるんですね。

コンサルティングで大切にしていることは何ですか?

コンサルティングではお母さんが今何を目指しているのかということが一番大事なんですね。私が決めるプランではなくて、お母さんが何を求めているのかを会話の中から引き出すようにしています。そしてそれに合わせてカウンセリングをすること。「ワンドロップカウント」という言葉があるのですが、ワンドロップでも母乳が出るのはとてもすばらしいこと。量だけにとらわれるのはよくないのです。もちろん母乳のメリットは伝えながら、最後に決めるのはお母さん。私はお手伝いできたらいいなという立場なんです。01

 

日本は母乳育児へのこだわりが強いように思いますが、アメリカはどうですか?

アメリカも日本と同じように母乳育児を重視しています。日米で母乳育児に対するお母さんの真剣な思いに変わりはありませんが、日本には独特のビリーブがあるように思います。それが災いして、「~してはいけない」というNGリストをたくさんつくってしまっている日本人のお母さんは多いですね。「母乳がつまったらマッサージ」というのも日本独特の考え方です。お母さんの胸のコンディションが悪くなるのは、赤ちゃんの口の開き方やポジションなどに原因があることも多くて、そちらを改善しないと本当の解決にはつながらないのに、もったいないですね。

ラクテーションコンサルタントになったきっかけは?

日本では管理栄養士をしていて、もっと勉強したいと思ってアメリカに留学しました。卒業後、政府が提供しているWIC(Woman Infant Children)プログラムという低所得者向けの栄養授乳プログラムのオフィスで働くことになり、会社を通してラクテーションコンサルタントの資格を取りました。WICプログラムは、妊婦さんから産後の食事、母乳育児、離乳食、その後の幼児食と子供が5歳になるまでのサポートプログラム。生まれる前からトータルでサポートできたことが、独立後の活動にもとても役立っています。栄養士もラクテーションコンサルタントも「予防医療」という点では同じ。アメリカでは医療費が高いこともあって、自分で健康を守ることがとても大切なんです。

育児と仕事はどのように両立されてきたんですか?

娘が生まれたのは、WICプログラムで働き始めて3,4年の頃でした。アメリカはキャリアをとても大事にするのでブランクをつくると後のキャリアに響きます。それに自分も働きたかった。半年で復帰して、その後はシッターさんに預けて、もう必死でした。でもその分、お母さんたちの気持ちがわかるんです。授乳の大変さや、働きながら子供を育てる気持ちも。

独立したのはいつですか?

娘が5歳のときです。もともと好奇心が強くて負けず嫌い。ずっと挑戦したかったのでやるなら今だと思いました。独立したのは、もっといろんな人種の方をサポートしたいと思ったから。自分も日本人ですし、日本人のお母さんにも自分の知識や経験を還元したかった。人生のなかではタイミングがあると思うのでやってよかったです。

独立してみてどうでしたか?

クライアントを獲得していくために、特に大事だったのは、ラクテーションコンサルタントの勉強会に入ったりして、横のつながりをつくること。自分が忙しいときは互いにクライアントを紹介しあったり、アメリカは同じ職業の者同士、助け合うことが多いです。それから徐々にクライアントが増えて、今ではこんなに困っている人が多いのかと驚くぐらい相談をいただいています。土日も依頼があれば駆けつけるので、決まったお休みはないのですが、毎回やっててよかったと思えるので、幸せなことです。

これから挑戦してみたいことはありますか?

引き続き今の活動を続けていくことが一番ですが、執筆にもチャレンジしてみたい。日本では助産師さんがラクテーションコンサルタントの役割までカバーしていることが多いですが、専門家ならではの知識や視点もあると思う。それを日本にも発信していけたらいいなと思います。

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日本では専門家に相談するというと、なんでも敷居が高く感じてしまいそうな世の中。逆にアメリカではそれが普通。コンサルもあくまでクライアントの意思が尊重される。大切なのは自分がどうしたいのかということ。かといって、「どうしたいの?」と迫られることもなく、共感を大事にする日本流のコミュニケーションのよさとアメリカのよさをいいとこどりしたコンサルティングは香月さんならでは。そして、育児しながら起業しちゃうパワフルさもかっこいい。留学時は英語もできなかったそうですが、今はクライアントの7割がアメリカ人だそう。「やってやれないことはない。」香月さんの言葉に私も力をもらいました。

ニッキー香月さんのサイトはこちら。訪問母乳ケアのほか、妊婦さん向けの母乳講座や離乳食講座なども展開されています。



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