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クリエイティブチーム日記vol.34「自分なりの視点を持つために」岡島悦代

毎週火曜日にクリエイティブチームのメンバーが日々のできごとを綴ります

クリエイティブチーム日記

クリエイティブチーム日記は、毎週火曜日にクリエイティブチームのメンバーが交代で書く日記。今週は、岡島悦代です。

自分なりの視点ってどのように手に入れるのでしょう?どんな風に世界を捉えて関わりをつくっていくのか。自由大学の講義づくりで大切にしている事の一つに、個人の思い入れや、その対象に傾ける熱意があります。時々、「どうやったらユニークな講義が出来るのですか?」と聞かれるのですが、自分の視点に気付くには、意識的に異質なものと交流して差異を発見することが有益だと思っています。良いとか悪いとか、好き嫌いを超えた先にあるものを理解しようとする姿勢。ある時、クリエイティブチームのメンバーと、表参道の自由大学校舎でアイデアを出し合う事しかしていなかった事に気づき、新たな刺激を求めて、みんなを誘って横浜美術館へ行って来ました。

現在開催中の「村上隆のスーパーフラット・コレクション ―蕭白、魯山人からキーファーまで―」は、日本を代表する現代アーティストの村上隆氏が蒐集した約5,000点以上にも及ぶ現代美術のコレクションの中から、既存の美術史的価値やヒエラルキーを超えて約1,100点が並列に展示されています。展示会場入口にあるキャンバスに描かれた萌画(二次元の女の子の絵)がずっと頭の中を付きまといながら、表装された禅画、生活の痕が染みこんだ雑巾、古墳から出土した埴輪、美少女フィギュアなどの作品群が自分の中にある価値観に揺さぶりをかけてきます。

エントランスを入ってすぐの「彫刻の庭」と名付けられたエリア。ジャン・ホアンの作品が不気味です。

エントランスを入ってすぐの『彫刻の庭』と名付けられたエリア。

投資のための価値がねつ造されているのかと懐疑的になり、作者の純粋な美の発露をお金に換えるなんて不浄だとか、生活を潤すために磨かれた技の美しさは美術的価値を生むのかなど、さまざまな感情が作品を目にする度に浮かんでは消え、「もの」そのものの意味や関係性考えさせられた最後に待ち構えていた「もの派」の作品。自分の中にある拙い知識で摂取した情報を解釈してみたけれど、現時点では処理が追いつかず。しかし、この先何度か振り返ってこの展示で得た経験を思い出しては考える絶好の機会を得ました。一緒に行ったメンバーにきちんと感想は聞いていませんが、きっとそれぞれにモヤモヤしている気がします。

アンゼルム・キーファーの『セフィロト』が個人的に気に入りました。

アンゼルム・キーファーの『セフィロト』が個人的に気に入りました。

今の世の中、携帯情報端末に合わせて最適化された情報の発信方法が喜ばれていて、変に効率化されていることが多いですよね。WEBの記事が〇分で読めるとか、本文を読む前に3つの箇条書きで要点が挙げられているとか。その影響からか書籍でも、たった一つの問題を解決すればすべてが上手く行くような本が人気みたいですが、すぐに理解できるようなものって結局、自分の身体に定着しない気がします。一夜漬けの試験勉強は、試験が終わった途端に忘れちゃいますよね。

自由大学の講義は1つのテーマを全5回で学ぶ構成になっています。1回きりの講演会やワークショップと異なるのは、受講生が自ら学ぶ姿勢を引き出す機会をつくっている事。かといって、全てお膳立てしている訳ではないのです。自分の中にあるものを「顕在化する=アウトプットする」ことをもっとやってもいいんですよ!講義で学んだことをzineにまとめてみたり、イベントで披露したり、講義レポートを書いてくれることや、同窓会を企画することも、人との関わり合いの中から新しい発見ができるんじゃないかと思います。自分を取り巻く環境を変える。そこで得られたオリジナルの経験が、自分の視点を養うことに繋がっていくのだと思います。



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