講義レポート

「いい靴」の条件とはなんだろう

「20年履ける靴に育てる」講義レポート

寒さと暖かさの差に驚かされ、強い風と舞い上がる何かに翻弄される3月、春が近づいていますね。「20年履ける靴に育てる」キュレーターのみよしです。

2月から始まっている14期も12名の仲間と楽しく進んでいます。今期は靴を作ったり修理したりと、靴のお仕事をされている方もいらっしゃって、いつもとはまた違った雰囲気です。靴をお客様に返すとき、作ったものを、修理したものをそのままお返しするのではなく、きれいに磨いて完成させられたらもっとお客様に喜んでもらえるのではないか、そういう気持ちで受講してくださったそうです。自分のものだけでなく、周りの人の靴も磨いてあげられるようになる、むしろ磨いてあげたくなる、それがこの講座の面白いところだと思います。

20年履ける靴に育てる」では、その場限りの技術を学ぶわけではありません。

もちろん、最終的には靴をピカピカに磨くという技を身につけられるのですが、これから長い間一緒にいたい靴をどうやって大事にしていくか。「靴が好き」だけでは良い状態で履き続けていけない難しさを知っている方も多いと思います。そこで、磨きの実習に入る前に「靴ってそもそもどんなものなの?」というところから共有していっています。

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靴の作り、革の特徴、どんな人はどんなデザインの靴が向いてるのか、靴のTPOなど、まずは知ることから始まります。靴のケアはよく女性のお化粧に例えられることがあります。洗顔をしたらすぐに乾燥を防ぐクリームを塗るでしょう。乾燥がひどいときにはいつもより多く塗り込んであげたりしますよね。お化粧は目の形や骨格などで色やデザインを変えたり、その人に似合ったものでケアしていきますよね。

靴も同じです。靴もそれぞれ革が違ったりデザインが違うのでそれに合わせたケアをしていくのが一番です。感覚としてそれを忘れなければ、ケアをすることは難しいことでもめんどくさいことでもありません。ケアをしてあげればあげるほどかわいくなってくるから不思議です。

さて、私もよくあるのですが、靴を磨かせて欲しいというと、たいていの方が「いい靴もってないから」と言います。

いい靴じゃないならケアしなくていいのでしょうか? そもそもみんなの言う「いい靴」ってなんなのでしょう? イメージとしてはやはり高級ブランドの靴でしょうか? 確かにそれもあるかもしれません。でもそれだけが「いい靴」だとは私は思いません。

この講座に来てくださる方は、今履いているものをもっと大切にしたくてという気持ちでいらっしゃっています。安かろうが高かろうが、その人にとって履きやすかったり思い出があったり、そういったものが「いい靴」だと思います。そういうものをケアしていきたいですよね。

とはいえ、もちろんブランドの靴は革の質がよかったり、デザインが素敵だったりと違いもありますよね。ここに来る人には、いい靴、というか、いい作りの靴というのはあるというのを知ってもらいたいです。

靴には芯が入っているのをご存知ですか? つま先とかかと部分に入っている芯がしっかりしているもの、それがここでいう「いい作りの靴」です。靴屋さんにいってみて履くことも大事ですが、手に取って靴の作りを確認することも大事なことですね。

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ところで、こういうふうに破けてしまっている人、注意ですよ。このまま放っておくのはよくありません。先程も書いた、いい靴であるポイントの、大事な”芯”が痛んでしまう可能性があります。外側のケアだけでなく内側も忘れずにケアしてあげましょうね。傷んだら直す、あせたら補色する、乾いたら 栄養をいれてあげる、そういった小さなケアの積み重ねで靴はどんどん育っていきます。

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鏡面磨きをマスターする上でとても重要な布の巻き方。指先にしわがよらないように、、お互いがチェックし合いながら覚えていくのは本当に楽しそうです。

「靴は履きつぶす」そんな時代はもう終わりました。今は大事にし続ける美しさをたくさんの人が身につけているように感じます。



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