講義レポート

気にいってるものだからこそ、丁寧に大切に長く履きたい

「20年履ける靴に育てる」講義レポート

20年履ける靴に育てる」キュレーターのみよしです。10期も早いもので3回目が終わりました。今期は、なんと妊婦さんの受講生の方が2人もいらっしゃいます。
「今、何ヶ月目ですか?」「5ヶ月です」「7ヶ月です」
赤ちゃんの話をされる表情を見ていると、なんだかとっても癒されます。そして、この講義のおもしろいところは、それぞれが持ってきた靴に対して赤ちゃんの話をするようなトーンで、
「今どれくらい?」「1年目くらいかな」「まだまだこれからだね」
「これ、お母さんが履いてた靴」「わぁ、レトロで可愛い!!」
なんて会話が交わされるんです。
靴はきちんと手入れをすれば、自分の足に馴染んできたり、味のある色に変わったり、長く使い続けるほど、愛しいものに育っていきます。サイズさえ合えば、お母さんの靴を娘が譲りうけるということもできちゃうんですね。後の世代に繋いでいけるものって素敵ですよね。

さて、第2回の講義では日常の基本のケア、第3回の講義では靴磨きの真骨頂とも言われている「鏡面磨き」を学びました。これは生徒さんが第2回の講義で持ってきた靴です。

気にいってるものだからこそ、丁寧に大切に長く履きたい

傷がついているし色も褪せているし、ご本人の言葉を使わせていただくと”オンボロ”の靴でした。私もそうですが、つま先はどうしても傷がつきやすいですよね。
基本のケアでは、まずはこうしたものを目立たなくさせる、そして革を元通りによみがえらせてあげることができます。汚れを落としてから保湿してあげるという一連の流れは、女性のスキンケアにも例えられることもあります。汚れ落としクリームで汚れをふき取ったら、靴の色に合わせた乳化性のクリームで保湿、補色します。
最後には強めのブラッシングでマッサージをしてあげると革がふっくら、もう”オンボロ”なんて言わせません。
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つま先は「靴の顔」とも言われているので、ここが綺麗になるだけで、だいぶ印象は変わってきますね。そして、この靴で「鏡面磨き」にチャレンジしました。基本のケアを終えたら、そこからワックスを使って磨いていきます。
鏡面磨きの難しいところは、水とワックスのバランス。革にとって水は大敵なのではないかと思う方もいるかもしれませんが、鏡面磨きをするうえでは水はとても大事なのです。シワを作らないように指に布を巻き、水とワックスをつけてつま先とかかとを磨いていきます。
「水とワックスの量は適量、磨く強さは窓をきゅっきゅとさせるくらい。」
文字にするとさっぱりわかりませんね。生徒さんの中には、もともと靴をケアしていた方もいるのですが、雑誌やウェブを見てもその感覚がどうしてもわからなくて、きれいに磨けたことがなかったとおっしゃいます。感覚をつかめるまで、指や目で何度も確認しながら、時には失敗しながらも、みなさん技を身につけていっています。
初めはなかなか光らずにへこたれそうになりますが、水とワックスのバランスがとれた瞬間、靴が輝きだします。みんなの「(輝きが)キテルキテル!」「キター!!」という声が聞こえてくると、とっても嬉しくなります。こうして、オンボロだった靴が艶やかに生まれ変わりました。
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「そんなにすきなデザインでもなかったし、だめになったら捨てるしかないと思っていたけど、愛着がわいてきた。」

この言葉を聞いて、とってもうれしくなりました。手入れをするというのは 高いものに限ってするものではないと私は思います。もちろん、高くて良い靴を買ったから大事にしたいという気持ちになることもありますが、今愛用しているものを、長く履きたい。これが一番だと思うんです。気にいってるものだからこそ、丁寧に大切に長く履くためのお手入れをしてあげる。こういう気持ちが、足元だけではなく、身の回りの全てにおいて感じていけたらもっと素敵かもしれませんね。

 



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