講義レポート

インドの叡智に出会う

「豆と野菜とスパイス学(昼クラス)」講義レポート

インド人は豆をよく食べる。日本人も豆をよく食べる。お寺さんの精進料理は豆が主役といっても過言ではない。この世の中から豆がなくなったら、おしゃれなビーガンも成立しないだろう。豆のことはずっと気になっていたのだが、インドの豆は奥が深そうだ。さまざまな宗派や民族が共存するインドにおける豆の存在感とは・・・

メタ・バラッツ教授のルーツは、グジャラート州という。「インドは極端です。都会は汚いですが、田舎はきれいで、ゴミひとつ落ちていない。洗剤は買わずに、ひよこ豆の粉で油よごれを落とします。」(第一回目の授業での、メタ・バラッツ教授の講義録より。)なんと堅実な暮らしの智慧だろうか。知られざるインドの豆と生活の叡智。むかしインドの家庭に滞在したとき、台所の流しに、粉が入った容器がおいてあった記憶が蘇る。あれはひよこ豆の粉(ベッサン)だったのか!

今から20年ほど前に、ムンバイでグジャラティーの家庭料理をごちそうになったことがある。その時食卓にずらりと並んだ豆と野菜の家庭料理の美味しさは今でも忘れられない。ベジタリアン料理を支える豆の底力を感じた。

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さて、今回の豆と野菜とスパイス学講義では、インドの豆とスパイスの基本、そして、野菜との組み合わせ、さらには豆の発酵料理なども伝授していただいた。インドの豆を知ってるつもりで、実はまるでわかっていなかったことに気づく。ムングダル、チャナダル、トゥールダル、ウダドダール、レンズ豆、ピンクマスールetc…基本的な豆の種類と名前を教わるが、ややこしい。豆の顔を覚えたいのだが、一見そっくりさんもいる。いったいどう判別すればよいのか?「毎日、眺めて仲良くなることですね」教授の答えはシンプルだ。

5回の講義は、毎回さまざまなアプローチで豆と野菜とスパイスを探る旅へ。豆料理につかうスパイスを学び、インドの食地図で比較文化しながら豆料理を知る。バラッツ教授撮影のインドの市場リポートはジャーナリスティックに。欧州留学経験のある教授は、世界の豆料理についても比較文化し言及する。

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(バラッツ教授、インドの地図で食文化解説中)

豆料理のレシピは実演講習。「ポリヤル」「ダールフライ」「サンバル」「豆のスープ」。計量カップやスプーンなしの直伝クッキングを、ノートに走り書きしながら鍋の中の変化を覗き見てメモする。 一見、シンプルクッキング、試食すると、まさに味わい深い本場インドテイスト。流石である。南インドの発酵クレープ(?)「ドーサ」の焼き方も伝授された。ウダドダールという豆と米にフェネグリークを入れて発酵させて焼く。ドーサに合うサンバル(ラッサム)を習い、チェンナイのホームステイ先の朝食を思い出し涙する。unnamed-4

(豆と米の発酵食ドーサを焼く実習も)

講義の後はランチタイムというのはラッキーだった。「バラッツ!スパイスラボ」のカレー定食をテイクアウト、実演講義のお惣菜とコラボ盛りオプションも。

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(「バラッツ!スパイスラボ」のカレーと実習レシピのコラボランチ)

受講期間中は、自宅のキッチンでも再現メニュー。普段は予習復習が苦手なのだが、今回はせっかく数種類の豆を揃えたのだから、豆を活用せずにはいられない。日々の惣菜の中に豆とスパイスを忍び込ませる術を模索する。週末のお客さまへのおもてなしにもまめまめしく、豆とスパイスの実験メニュー。

日本の郷土料理にスパイスとインドの豆を融合させてみるのも楽しや。さっそく鹿児島に週末帰省した際に、サツマイモと野菜の天ぷら「ガネ」にひよこ豆の粉とウダドダール豆とスパイスをブレンドして「ガネーシャ天」創作。ボランティアで参加したコンサートイベントの打ち上げ宴に豆のカレーといっしょに提供し、東京からのゲストにも地元の人々にも大好評でホッとする。

そんなわけで、4月〜5月は、豆と野菜とスパイスの日々に。

最終講義の日。お名残惜しやとおもいきや、「自由大学祭」に参加するという話題が出た。豆とスパイスブックのようなレシピキットをつくろうと一気に話がすすむ。願わくば、ネパール大震災のために寄付できれば、世の中にも貢献できる。あと2週間しかない!バラッツ教授の指揮のもと受講生のプロボノ始動。本部との連絡をPRプロのY女史が迅速にすすめ打ち合わせへ。

コンセプトは、「豆と野菜とスパイス学」+「和」。チームリーダーS女史がパッケージとロゴのデザインを担当。レシピは、和食シェフのN女史による「豆とスパイスをつかった煮浸しの素」。アナログ筆者は、Y女史と豆キャラを筆ペンで落書き。2週間後、バラッツ教授監修、「豆と野菜とスパイス学」プロデュースの「WALAB.」まめまさらブックが出来上がった。

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自由大学祭の当日は、「WALAB.」のパッケージをずらりディスプレイ。豆と野菜とスパイスをつかったオリジナルレシピも持ち寄り出品。「豆と野菜とスパイスのふりかけ」「いろいろ野菜のアッチャール」「ガネーシャ天」。全品100円。すべてネパール・ヒマラヤ大震災支援のためにドネーション。「WALAB.」まめまさらブックは、700円のうち200円を寄付することに。おとなりの「スパイス学」ブースの「至福のカレー」と、香り高くピースフルにコラボさせていただいたことにも心から感謝♪

メタ・バラッツ教授の「豆と野菜とスパイス学」講座の第一期生として、5回の講義と実技で学べたことは奥深く、リポート筆舌には尽くしがたい。「豆」「野菜」「スパイス」が三位一体となって、語りかけてくる世界。それは、インドの大自然と悠久の歴史の中で育まれてきた哲学の奥義なのか。それとも、「まめまめしく生きよ」という現代人へのメッセージなのか。

豆と野菜とスパイスを学ぶこと。ひょっとしたら、これは世界の平和と調和を学ぶ鍵になるのかもしれない。

(Text: 第1期卒業生 lisa somekawa kitanakaさん)



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