クリエイティブチーム日記は、毎週火曜日にクリエイティブチームのメンバーが交代で書く日記。今週は岡島悦代です。
私が炊飯器も電子レンジも使わない生活になって6年くらい経過します。「不便じゃない?」と聞かれるのですが、それらの置き場所や細かい手入れから解放されて気に入っています。おかげで土鍋を使って20分そこそこでご飯が炊けることも発見し、理想の炊きあがりを探求する楽しみも増えました。そして今年挑戦してみたいのが、発酵食品をつくること。
ちょうど1月14日と15日に青山ファーマーズマーケットにて「発酵醸造未来フォーラム」が開催されました。日本酒やかつお節の出汁をつかったラーメン、味噌など日本を代表する発酵食を楽しめる「ファーメンテッドマーケット」や、日本食文化の未来を登壇者が語り合う「ファーメンテッドシンポジウム」が開催されました。
米国オレゴン州ポートランドでも、毎年Portland Fermentation Festivalが過去7回開催されており、主催者メンバーであるLiz Crainさんがこれに合わせて来日しました。Lizさんは、ポートランドの人気レストランのレシピ本を手がけるフードライター。かねてから、日本の発酵食品に興味があったので、来日をとても楽しみにしていたそうです。
せっかくLizさんが来日するので、ポートランドの食文化や発酵食品の面白さを体験できるイベントを企画しました。NWキュイジーヌと呼ばれるシアトルやポートランドを含む食の文化圏は、近郊農家のオーガニック野菜を使い、農家との関係性や持続可能な食品調達環境に配慮しながら料理をすることに特徴があります。イタリアンでもフレンチでも食材を調達する姿勢が料理の一部となっているのです。
Lizさんが日本の発酵食や調理法の話をすると、参加者は親しみのある食材の異なる視点からのアプローチに興味しんしん。彼女が納豆の臭いを克服した話や、味噌をお湯で溶いて温野菜のソースにしたり、ドレッシングにしたりとオリジナリティ溢れる味噌との向き合い方に好奇心を刺激されました。彼女はポートランドでも味噌造りに携わっているそうですが、帰国時には味噌専門店で買ったさまざまな種類の味噌を買って帰ってさらに研究を重ねる様子でした。
そして、シアトル出身のベトナム系アメリカ人のLuuvuさんにベトナムの発酵食品を使ったお袋の味の料理をデモンストレーションして頂きました。エビの発酵ペーストや魚醤を使ったベトナム風佃煮は冷蔵庫にあると便利な常備菜のようなものだそう。フランス人がチーズが好きなように、ベトナムでも日本でもそれぞれの国で愛されている発酵食品があることを気づかせてくれました。
発酵食品は、人類が農耕をはじめる前から存在しており、生きるための知恵が脈々と受け継がれている証しです。都会に住む私が発酵食品をつくるのは、自分の身体は生き物と共にあることを身近にしてくれることなのかもしれません。発酵と関わることは、また一つ主体的に生きる術を見つけた気がして、そんな雰囲気を醸していきたいなあと思うのです。
(Photo:星 由香利)