ハイローカル=人間として全体性を保ち、美意識を持って暮らす
キュレーターの本村拓人です。みなさんは色気と聞くと何を連想するでしょうか?セクシーさとか、グッときてしまって無視できないものごととか。おそらく、多くの人が「説明しきれないのだけど、なんだか気になってしまう人やモノの魅力」などと答えるでしょう。私は「無視できない行為や状態」と定義しています。様々な定義がありますが、基本的に色気がある人は個性が強く表現されている場合が多いはずです。個性とは衣食住遊を含め、個人の生活により育まれると考えています。今回の講義のゴールは受講者が自分の個性を最大限に発揮させる暮らしを作り始めることです。

私は自由大学キュレーター陣の中でも最も多く海外へ出ています。年間を通して50カ国はゆうに飛び回っていますが、今は、奥会津(福島県)で色気のある=個性のある暮らしを創ろうと決め動いています。なぜ奥会津なのか?そこ住まう人々はもちろんの事、訪れた人は皆会津若松や喜多方、磐梯山を愛しています。それだけでなく、私が暮らしを創ろうとしている奥会津には個性溢れる個人が移住をしたり、多拠点生活者も仕事や暮らしの拠点として丁寧に暮らしている姿があります。言葉にできないけれども、無視しようとも頭の片隅にずっとついて回る地域の一つです。実際に1年半かけて日本全国を周った中で最も好きなローカルの一つですし、海外の友達にも評判がとても良いのです。彼らになぜと聞いても理由があるようでない。つまりは会津の色気に皆惚れ惚れしているのでしょう。

誤解を恐れずにいうと、完全移住をするわけではありません。都内に拠点を構えながら、会津や様々なプロジェクトを進めている東北地方へ飛びつつ、変わらず海外にも出かけます。他局分散の時代と気づかれている方々の多くは多拠点で働き暮らしをしています。海外を含め、今の時代は移動も生活コストもとことん安くなっている事は実感として感じられていることは多いはずです。大それた事をやるのではなく、私の選択は純粋に今っぽいのでしょう。独り身から家族を持つという意識を持ったことも大きいのでしょうが、一生涯移動し続けることはやめませんし、定住の経験やDIYの能力を向上させることもやめません。移動することが個性の一つで、暮らしを作ることでその個性はさらに開花してゆきます。

もう一つ違った視点でこの講義をやろうと思えたのは、この自由大学を創設した黒崎輝男さんが一年前から手がけられているTakigahara Farm(石川県小松市滝ヶ原)がまさにその色気をまとったローカルの典型だからです。滝ヶ原でしか摘めない天然のきのこや薬草を使って料理や予防医薬として食し、早朝からは自分たちが耕したファームで一汗かいて美味しい朝食を近所の人たちと囲む。団欒の典型がそこには広がっています。暑い夏には近くの小川で涼んだり、苔庭まで足を運んで心を落ち着かてみる。仕事や読書は自分たちでこしらえたカフェで一服しながら進めて、お腹がすいた頃には古民家をモダンに改装した共同住居に戻りこしらえ始める。キッチンに並ぶ食材は裏山や近所の農家さんと交換したものが多く、とにかく新鮮で美味しい。地酒を嗜み、寒い日は囲炉裏を囲って主人の一人であるような顔をしている猫と戯れる。繰り返しの毎日もあるが、人里離れたローカルにいて、世界の人とも繋がれるのも滝ヶ原の色気をさらに発酵させているのでしょう。働くけど、働きすぎない。そんな基本姿勢は絶対に崩さない移住者や先住の生活者たちからはゆったりとした時間の過ごし方を教わることになる。共通の姿勢もありつつ、強烈な個性も健在で、それらが重なり合うから色気は増してくる。
滝ヶ原と奥会津の色気が違うように、北は北海道東川町や秋田県湯沢市、山形県寒河江、関東は千葉県大多喜や松戸、西は京都与謝野町や滋賀県近江、島根県雲南も好きだ。南は長崎小浜や八女、壱岐など、それぞれの色気はもちろん言葉では言い表せない。けれど、いつのまにか再訪問をしてしまうような無視できない存在である。

色気は地域経済をも発展させていきます。先に述べた滝ヶ原には行政のお金に依存せずとも、地域外から連日多くの人が押し寄せます。インフラが大切だと声高に言いますが、地域経済で最も重要なことは個性や色気である。金沢には新幹線でふらっと行けても、その先の小松やさらに先の滝ヶ原にはふらっとは行けない。それでも人はそこでしか体験できない色気に触れるに集まるのはなんとも未来がある。
今回の講義を終えてみなさんには具体的な個性ある暮らしの実践が求められる。言い出しっぺの私は奥会津での関係性や仕事づくり、もちろん、暮らしの核である住居の選定から予算組み、DIYによる改修作業に必要な技術の把握など、全て自分らしい暮らしを作るためには必要なことを定義し、実際に行動していきます。そもそも、自分はどんな暮らしがしたいのか?自分ってなんだという部分にも答えを出していきます。最終的に行動する・しないよりも、できる状況を作る。そして、暮らしを作る為の必然性や必要性を感じ取ってもらえる講義となります。

私がそうであるように、ハイローカルの実践者をメンター(良き師)の必要性もいうまでもなく大切です。実践者がこれまでにどのような個性やエゴを貫き通しながら圧倒的な色気を出してきたのか、その方法にも触れていきます。彼らがおすすめする日本のローカル情報も必見となるでしょう。生き方や暮らし方を超えて、美意識の磨き方にまで議論が及ぶとよいなと思っています。
課題図書:LIFE SHIFT(ライフ・シフト)-100年時代の人生戦略
(第1期募集開始日:2018年1月25日)
『ハイローカルを創ろう』説明会
2018年3月21日(水)19:30-21:00 Facebookページ
場所:自由大学 東京都港区南青山3-13 commune2nd内自由大学
参加方法:各Facebookページより参加表明をお願いいたします