講義レポート

バンブー建築の最前線

竹素材を使った建築の最新レポート

建築素材というと、皆さんはどのようなものを想像されますか?日本は風土や気候に合った木造建築の技術が古くから発達してきました。近代では鉄やコンクリートといった資材が主流となり、施工方法も大がかりになってきました。「小屋を作ろう 〜バンブーハウス編〜」では、荒廃地に生えた竹を有効活用し、人が集う場所をつくろうという試みです。では、建築資材としての竹はどのような可能性があるのでしょうか?教授の菅真樹さんにバンブー建築の最前線を取材して頂きました。

ibuku

ibuku.comより

 

バリのデザイン会社、IBUKUが作り出す建築が、ここ数年のバンブー建築ブームを牽引しているのは間違いないでしょう。素材である竹の加工方法や施工のディテールなどを新たに開発しながら、今までにないデザインや、規模・構造の竹を使った現代建築を作り出しています。

実際にIBUKUがサポートする、バンブー建築をつくるワークショップ「bamboo U」に参加された黒川彩子さんと出会いました。建築素材は竹以外使用しない、というマッチョな建築をワークショップで作れるものなのか?期待が膨らみます。

黒川さんは外資系ネット企業に勤務しつつもTEDxTokyoChangeのディレクターをされたりとアクティブな活動をされています。昨年、baliのgreen campが企画したワークショップに参加された様子を伺ってみました。

菅:bamboo Uとはどんなワークショップでしたか?

黒川:参加者が1週間でバンブー建築をつくるというとてもハードコアなものでした。(笑)参加者は10人ほどで、国籍も違えばバックグランドも目的も違っています。

菅:バリのジャングルの中でものすごい多様性ですね(笑)ワークショップの運営はどこが行っているのですか?

黒川:bamboo Uは、green schoolの校舎の一部を使用して行われるのですが、運営しているのはgreen campという別の組織が運営しています。宿泊施設も備えていて、多様なワークショップが連日開催されています。小屋作りのテクニカルなサポートはgreen schoolの校舎のデザイン・施工を担当するデザイン会社IBUKUもサポートします。

菅:黒川さんはbamboo Uのどこに興味を持たれたのですか?

黒川:バンブー建築というよりは、green schoolという取り組み自体に興味がありました。なのでgreen schoolの視察というのりで、実際bamboo Uという竹の建築をつくるクラスは、2回目の実施と運営自体もまだ手探りな印象をうけました。

菅:green school自体も注目されてますよね。

黒川:新しい教育を生み出したいというビジョンが生活や施設にも徹底されているんです。

菅:バンブー建築も教育理念の一部といえますね。シュタイナーみたいですね。

黒川:そんな環境へ我が子をと世界中から移住してくる入学希望者が増えているようです。私が行った時は生徒数は400人くらいと伺いました。

※green schoolについてはgreenz.jpの「バリ島グリーンスクール視察レポート」に詳しく書かれています。

 

菅:ところで1週間でバンブー建築は完成しましたか?

黒川:完成はしないですね(笑)
ですが、その小屋も学校の施設として使用する計画があるようで、green campのスタッフが引き継いて形にしていくような流れがあるようでした。

何をするにでも、デザインや学びの視点がバックグラウンドに存在していて、達成することも重要ですが、課題を見付け克服することを重視する風土を感じました。実際参加者からの「こうやったほうがいいのでは」という提案に対して、あっさり「そうだね」なんてやりとりがありました。

菅:いっしょに学ぶ感じがいいですね。ぼくたちが企画している授業も、作り方を教えるのではなくいっしょに学んでいくプロセスをイメージしています。カリキュラム的にはどんなかんじで進むのですか?

黒川:まずは竹についの知識のレクチャーからスタートして、加工、組立にチャレンジしていきます。ランプづくり、イスづくりと小さいものからスケールアップしていきます。が…もう終わらないし、うまくいかないしで(笑)

イスにチャレンジしていて、組み上げるときに竹の太さが合わなくて組み上がらない!がびーんみたいなことが起こるわけです。ただし、IBUKUの竹職人さんがささっとヘルプしてくれたりして。なんとか進んでいく。

菅:いきなりハード(笑)

黒川:ここまでで竹についてのイロハを修得するイメージですか。バンブー建築への道のりは長いですね。そして後半から建築づくりにシフトしていきます。驚きなのがかれらは図面を書かずにつくるんです。そのかわりに小さな模型をつくってデザインや構造のスタディをおこないます

菅:えー、日本では考えられないですね。法規とかいろいろツッコミが…

黒川:そうなんですよ、現地の方もバンブー建築はバリの気質から生み出されているかもねなんて話してました(笑)

菅:いいですね風土からインスパイアされる建築!ずっと授業ばかりが続くのですか?

黒川:あいまに竹の加工工場を見学したりIBUKUの作ったリゾートホテルsharma springsを見学したり息抜きもあります。sharma springsは窓も壁もなく、どうしても閉じたいときはカーテンで仕切る仕組みになっています。熱帯雨林のジャングル感を満喫できるホテルです。ここはほんとにオススメです!

 

と、この他にもたくさんの話を興味深い話を伺いました。黒川さんありがとうございました。とてもマッチョな建築の話になってしまいましたが、「小屋を作ろう 〜バンブーハウス編〜」ではIBUKUのつくりだすバンブー建築とは真逆のローテクノロジーだけれども、知恵とデザインマインドのある小屋を参加者のみなさんと考えたいと思います。では、葉山の風土に感化された建築をたのしみましょう。

黒川彩子
外資系ネット企業に勤めながら、人の居場所やコミュニケーション、コミュニティの作り方について活動、勉強している。TEDxTokyoChange2013ディレクター。国際基督教大学卒業。シアトル市役所Department of Neighborhoodインターン


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