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FREE from FREEDOM隔週で発行している「自由大学マガジン」の人気のコラム、FREE from FREEDOM!そのバックナンバーをお届けします。


先日、とある割烹を訪れた。ひとつひとつのお料理の美味しいこと。それもじんわりと沁みてくるようなやさしい味わい。自然で何気ないけれどすべてが計算されている、これぞプロの技と思える料理だった。料理は五感で味わうもの。それほど敷居の高くない雰囲気で、古民家を改築した建物とその空間にあったしつらえ。そして料理をまとうお皿も飾らない料理にぴったり。すべてが調和しているから料理も美しく映え、美味しく味わうことができる。とりわけ気に入った器があったのだけど、きっと我が家ではあの場所でほど美しく見えないだろう。

モノにはそれぞれに美しさがあって、その美が発揮される空間がある。割烹に似合う器と我が家に似合う器は違うのだ。それでもあの日の割烹で感じた美のようなものを生活の中にもってこれないかと考える。それは器とかお料理とか単体の何かと言うよりは、空気のようなもの。そんなことを考えていると、こうして自分のものさしがつくられていくのかって思う。自分の生活に何が似合うのかを決めていくのは自分。その基準をつくるのは体験。

先週のレクプラには、一人旅のつくりかたやシンプルな家具をつくる講義や、楽器を使わずにテクノロジーを使って音楽をつくる講義なんかがプレゼンされた。旅はまさに自分をつくる体験だし、家具をつくれるようになったら、ますます自由自在に生活美を探求することができる。暮らしから自分だけの音楽が生まれたら、もっと一人一人の個性が見えてきそう。そう、本当はみんな一人一人違う暮らしをしているはず。同じ会社に行って同じ仕事をしている人だって、朝ごはんに何を食べたか、今日何を着ているか、違うことはたくさんある。だけどなぜか、流行に左右されて同じものを欲しがったり、説明を読んで美味しいとか美しいとかを判断しようとしてしまう。生活の中にある自分のものさしに気づくと、もっと自由にクリエイティブに暮らすことができるかもしれない。

text: 小酒ちひろ(クリエイティブチーム)

[自由大学マガジン vol.129 2015/3/4]



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