住むのも、食べるのも、電車に乗るのも。
都市の暮らしは、何をするにもお金がかかります。「これは安い」「高い」と感じながら、何かしらを買って支払っている毎日ですが、わたしたちはお金について、ぼんやりとしかわかっていないかもしれません。
もし「お金って何なの?」と子どもに聞かれて、自信を持って教えられる大人はどれくらいいるでしょうか。「もっとお金が欲しい」と言われた時、「我慢しなさい」以外に、お金をふやす方法をアドバイスできるでしょうか。「ねぇ、お金を借して」と頼まれた時、「お金を借りていい場合、いけない場合」を説明できるでしょうか。
お金の価値観は、親の影響を大きく受けている
子どもに伝えるためには、まず、将来親になる(すでに親である)あなた自身が、「お金観」を定めておくことが必要です。
お金に「抵抗がない」という人も「何となく苦手」という人も、その価値観形成には「育った環境=親の影響」が大きいもの。
お金は目に見えないけれど、快楽や自尊心、嫉妬、悔しさ、不安、痛みなど、さまざまな強い感情とつながっています。誰もが大人になるまでに、知らず知らずのうちに独特の思考の癖ができていきます。
例えば、あなたの子どもの頃を思い出してみてください。
・お金の話題を気まずそうに避ける両親を見て、
「お金が欲しいと望むのは、はしたないことだ」と思い込んだり
・毎晩、職場から不機嫌な顔で帰宅する親を見て、
「お金を稼ぐことは辛く、何かを犠牲にしないといけないものだ」
「楽しさの対価としてはお金はもらえないのだ」と勘違いしたり
・お金のことで夫婦喧嘩していた家で、
「お金とは人間関係にヒビを入れるものだ」「人を変えてしまう怖いものだ」
「お金で人間の価値が決まる」「お金さえあれば幸せになれる」「お金=愛情のバロメーターだ」などと勘違いしてしまうこともあります。
まさに十人十色の癖があります。
比較的、欧米では小学生からレモネードなど簡単なモノを売って商売の仕組みやお金について学ぶこともあるようですが、日本では「子どもにお金の話は早い」と遠ざけられる家が多いようです。公立の学校では、現在の義務教育の約8690時間のうち、お金のことはほとんど教わってきていません。先生も、せいぜい「無駄遣いはいけません」くらいで、何を無駄とするかの考え方までは触れません。
個人の時代には、誰もが「人生の経営者」。一人ひとりがお金と向き合っていく
かつて終身雇用の時代では、会社がひとまとめで税金、年金、貯金の面倒を見てくれていました。しかし、現代は、多数の転職やパラレルキャリアが当たり前に。フリーランス、起業家がますます増えていく時代です。
こうなると、すべて自己責任。各自がお金について学び、自分に合った活用法を考えなければなりません。さらに子どもたちの次世代になれば、多様な働き方は加速し、総フリーランス社会になっていくのではないでしょうか。
また、平均寿命が80年から100年に延びると言われる今、老後2000万円問題が話題となり、年金制度にも頼れません。iDeCo(個人型拠出年金)やNISA(少額投資非課税制度)ができたのも、「老後のお金は自分たちで考えて、早いうちから資産運用してください」という国からのメッセージ。会社や国に任せておけば守ってくれる時代は、すでに終わりました。
たしかにお金のことは面倒ですが、いつまでも逃げることができないなら、早いうちに腹を決めてきちんと向き合うほうが得策ではないでしょうか。
望む未来が違えば、必要なお金も違う
お金は、ただのツールでしかありません。大切なのは、そもそもあなたにとって「幸せな人生とは」「どういう人生を送りたいのか」です。
・世界中を旅してみたい
・海の見える丘に白い家を建てたい
・ミシュランレストランをはしごしたい
・宇宙から地球を眺めたい
・大好きな研究や創作に没頭して生きていきたい…
人それぞれ、独自の価値観を持っています。
音楽が好きな人、食べるのが好きな人、電車が好きな人…
ストイックな人、楽天的な人、ネガティブな人…
その人の価値観や嗜好によって、どんな人生を送りたいかはそれぞれ異なります。どこに住んで、どんなものを食べて、どんな服を着て、どんなことをするのかによって、一生涯にかかるお金は、一人ひとり違うわけです。
にもかかわらず、多くのひとは「自分がいくらあれば満足に生きていけるか」を具体的に考えたことがありません。そして、その資金を手に入れるには、どういう方法があるのか、よく分かっていません。(もちろん、お金を使わず手に入れる方法もあるでしょう)
お金の不安から解放され、思い切りチャレンジしよう
この講義で目指すのは…
・お金と「世の中のしくみ」を自分なりに理解し、漠然とした不安から解放されること
・自分なりのお金観ができること
・その考えを、大切な人とわかりやすく共有できるようになること
子どもに伝えるだけでなく、「結婚相手」や「仕事のチーム間」でも、お互いの金銭感覚の意思共有は大切です。離婚理由でも、起業の失敗でも「パートナー同士の金銭感覚のズレ」が上位にくるのは、ご存知かもしれません。
何を「意味のある投資=生き金」として、何を「無駄な消費=死に金」とするか。ここが大きくズレたままでは、人生や共同体の経営は難しくなります。臆せず、自信を持って対話できるようになりましょう。
好きなことで生きていこう、と望む人は増えています。しかし、腰が引けてしまうのは、お金の心配。「もし食べていけなかったら、どうしよう」という不安です。
あるアンケートによると、「一生食べていけるお金があれば、今の会社は辞める」と答えた人が過半数いたそうです。お金の問題をクリアすれば、誰もが夢に挑戦しやすくなるはず。「お金のリテラシー」を基礎教養として身につけて、いくつになってもやりたいことができる人生にチャレンジしていきましょう。
この講義を企画したキュレーター石田智美さんよりメッセージ
わたしは、もともと市役所で勤める公務員でした。「たった一度の人生、やりたいことをやって生きたい」と強く思ったある日、自分の送りたい人生、やりたい夢を一枚の紙に書き出してみました。具体的に考えると、このまま公務員の給料で節約して貯金しても足りないことに気づきました。
それをきっかけにお金について研究、本気で学び始めました。基本的に公務員は副業がNGなので、お金を増やすためにできることは資産運用しかなく、リスクの少ない投資と不動産投資を始めました。
試行錯誤の末、将来安定的に得られる収入源を築くことができたので、公務員は卒業し、独立して今では、やりたい仕事に打ち込んでいます。
わたし自身、もっと「幸せとお金」について研究したく、この講義を企画しました。各分野に造詣の深いゲストをお呼びして、皆さんと一緒に考えていきます。
(第3期募集開始2020年10月26日)