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「自由大学祭2011」第2部は、有機的に複数の仕事をする働き方「アメーバワークスタイル」についてのトークライブ。自由大学広報チームの鈴木さんがレポートしてくれました。


毎月のレクプラで名司会っぷりをみせてくれているモデレーターに新小田裕二さんを迎え、「アメーバワークスタイル」を体現している4名のスピーカー、「未来の仕事」教授、ソウエクスペリエンス株式会社代表 西村琢さん。「ナリワイをつくる」教授の伊藤洋志さん。自由大学の仕掛人である黒崎輝男さん。そして自由大学学長の和泉里佳さんにお話をいただきました。


「アメーバワークスタイル」とは?
アメーバワークスタイル。それは「ひとつの仕事、ひとつの会社に縛られるのではなく、有機的に広がり増殖を続けながら働くスタイル」。ITの進化や価値観の 多様性を受けて、どこか一カ所に所属し、メンバーや場所を固定する働き方が変化してきています。アメーバとは、栄養のあるところ、必要なところへ流れるように有機的な動きをする生き物。組織自体が増殖し、徐々に広がって行くスタイルなのです。自由大学も母体となるスクーリングパッドから派生した学びの場です。また大学の起源も、教授ありきではなく、人が集まり、その中で自分たちに必要な学びに合った人を連れて来てを話を聞く場がスタートだったと言われています。それをモデルに授業を組み立てる自由大学の誕生や動き方は、まさに有機的だといえます。
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なぜ今、アメーバワークスタイルなのか?
大正時代、日本には、仕事の種類が3万5千ほどあった。現在は約3千種類。当時は水を運ぶだけでも仕事になった。また、自分たちの排泄物が堆肥にし、それを売ったり。そう遠い昔ではない時代、生きること自体が生業だった。」とお話してくださった伊藤さん。
多くの工程が機械の導入で人の手が必要なったことを考えると非常にうなづける結果です。自然の恵みを頂くはずの農業でさえも、畑に除草剤をまき、商品だけ(たとえばキャベツならキャベツだけ)が生えるような方法が一般的だそう。無駄を省き、商品の効率的な生産を、と考えると、雑草の1本もない畑は非常に効率がいい。しかし、自然界から考えると異様な風景が畑には広がっていて、その道のプロである農家さんも、そのやり方しか知らないという状況なのだそうです。(もちろん、その効率的な方法のおかげで毎日スーパーにズラリと食材が並んでいるのも事実ですが。)
経験というリアルな体験こそが仕事のやりがいにつながるはずなのに、今バーチャルとリアルが遊離してしまっている。自分の足で動かず、情報を得ることだけで 満足し、知っているような気になってしまいがちな世の中、巨大化しフレームワークのおかしくなった会社の中でヒューマンな生き方ができるのかは非常に疑問。一生懸命に勉強をして、大学へ行ったとしても、就職ができない。世の中のシステムがおかしいのではないか。」と、今や新卒生の就職率が6割を超える現状に疑問を投げかける黒崎さん。
西村さんも「今日、何を食べるか、誰と過ごすか、どこへ行くか。そういうリアルなことがとても大事だと思っている。仕事とは一日の多くの時間を費やすもの。だからこそ、そういうリアルな部分が大切なのでは。」と語っていました。
働くこと=就職すること、とそこに疑問すら抱かず、他の選択肢があることにも気づかず、就職という枠内で、どの会社を選ぶべきかと大勢の人が考えてきました。しかし、実は就職とは働くという中の選択肢のひとつに過ぎず、またひとつだけを選ぶという概念もいつの間にか凝り固まったものかもしれません。仕事とプライベートも実は分ける必要がないのかもしれません。経済発展こそが豊かさだった時代は終わり、これからの新たな豊かさは、私たち自身が考え、創って行かなくてはなりません。そう考えた時に、何かを犠牲にしたり、収入のために信念を曲げるような生き方は、次の時代にふさわしいスタイルとは言えないでしょう。”好きな人と、好きな場所で、好きなことをすること。”アメーバワークスタイルを実践されているスピーカーの方が、非常に豊かな生き方をしているように見えるのは、この3つが満たされているから、そう思えてなりませんでした。
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実際のアメーバワークスタイル
大学を卒業してから就職ではなく、自分で仕事を作る起業というスタイルを選んだ西村さん。講義のゲストとして参加した会社と一緒に仕事をしたり、受講生がオフィスで仕事をしたり。時には西村さんののお子さんを連れてくることもあるそうで、従来であれば公私混同と言われてしまうようなワークスタイルですが、そこは自然体で柔軟な発想のできるアメーバワークスタイルを取っているからこそ、可能な働き方なのでしょう。
月に30万の仕事を1つ持つのではなく、月3円の仕事を10個持つことを提唱、実践する「ナリワイをつくる」教授の伊藤さん。もともと書くことが仕事の一つで、言葉を非常に重要とする伊藤さん。仕事のことを「生業(ナリワイ)」と呼ぶのは
自分の方向性や生き方を示すのにナリワイという言葉の方が、自分の良心や信念からそれることが少ない。自分が生きていく中で、他人や世の中の役に立つこと で、お金いただく、そういう感覚になる。」からなんだそうです。
伊藤さんは、モンゴルツアーを開催したり、出逢ったおばあちゃんが好きで編んでいた服を売ってみたり。結婚式の企画・設営をしてみたり。東京・京都・熊野の3カ所に、誰も使う人がいなかった家を見つけ、時には住み、時には人に貸し、家賃収入を得たりもしているのだそう。
伊藤さん曰く「仕事も同じで、仕事になるのにたまたま誰もやっていないことは世の中に以外とたくさんある。人手がたりなくてやるべきことがやれていない。農業も、今までのやり方に、新しい人が加わって別のやり方をすれば必ず上手くいく。自分で行動していると、ささいなことが仕事につながる。そして、人が目の前にいると、その反応が得られる。
会社などの組織を通すことなく、目の前にいる人を喜ばせることで、お金を頂く。私自身もそうですが、働いた報酬は決まった日時に銀行口座へ振り込まれ、給与明細だけが手元へ届く、という給与のもらい方を長く続けてきた人にとっては、新鮮な伊藤さんのナリワイ。就職して仕事をもらうのではなく、自分で作る。実践していらっしゃる方から直接話を伺うことで、新たな働き方が少し近づいた気がしました。
これからのアメーバワークスタイル
こう聞いていると、とても魅力的で創造的な生き方をされているスピーカーのみなさん。しかし、既成の枠からはみ出す勇気や手法の持ち方はいったいどんなモチベーションからきているのでしょうか。
僕は、個人のパワーというのは思っている以上にある、そう思っている。出来るということが示したいのではなく、意外とやってみるとできることが分かって来た。今の会社も、友人とノリで始めたものが続いて、どんどん広がっていく。そういうことって、面白いし、その喜びをいろんな人と共有したい。」と西村さんはお話ししてくださいました。
自由大学の学長をしながら、実際に授業をつくったり、他にも色々な仕事が増えるというより派生していっている」とアメーバワークスタイルを実践中の和泉さん。そんな和泉さんは、上海で会社の立ち上げを経験していて、そのきっかけは、転勤でも転職でもなかく、まさに学びの場。通っていたスクーリングパッドのゲストスピーカーの方から「上海で人を捜してるんだよね。やってみない?」という声かけに、言葉が喋れるわけでも、上海好きでもなかったけれど、「じゃあ、行きます。」というひとことからスタートしたのだそう。
インスピレーションがあって、そこからのアクション。『じゃあ、やってみれば』に『じゃあ、やります』と、とりあえずやってみる。なぜ会社をやめて今こういう風になっているかというと、女性は誰でも結婚や出産、子育てを考える。その時にキャリアを切ってしまうなんて考えられなくて。生きていること=キャリア。記憶がなくわるわけでも、友達がいなくなるわけでもないし、自由にいられるように自分自身がなっていきたいとう思いが根底にあった。○○会社の誰々です。●●ちゃんのお母さんで終わりたくない。全員には当てはまらないかもしれないけど自分を信じて動いてみるのが一番だ!と思った。」と、女性ならではの視点でお話してくれました。
さまざまな経歴を持つスピーカーの方に共通していることは、やはり「実際にアクションを起こしてみる」といことでした。自由大学では、今後も、学びの熱を増殖させ、その熱をそのまま次のアクションに変える場や機会を創りつづけていきます。「アメーバワークスタイル」のイメージが、実践されている方々の言葉を通して具体的で共感できるものになったトークライブ。誰もが憧れながらも、他人事のよう に感じて蓋をしてきた、自分の信念を曲げる必要のないヒューマンな生き方。そんな「アメーバワークスタイル」がここを発信源に、広がって行くことを予感させる静かな熱気を感じました。


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