講義レポート

広がる山登りの面白さと楽しみ、そして仲間の輪

「東京・日帰り登山ライフ」講義レポート

東京・日帰り登山ライフ」キュレーターの大内征です。里山は梅の花が最盛の時を迎えつつあります。ほどなく桜が咲き、緑が濃くなる季節。コンクリートに囲まれた暮らしをしていると、土や木々の香りに鈍感になってしまい、ついつい週末には奥多摩や丹沢といった山々へ足を運びたくなってしまいます。

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そんな同じ気持ちをもった「登山初心者」の仲間がぞくぞくと集まってきているのが「東京・日帰り登山ライフ」です。座学を通して受講生の融和を図り、実際に「日帰り登山」をするこの講義は、およそ5週間を経て「山仲間」となり、卒業後もとてもよい交流が続いています。

山頂に立った時の感動と、チーム目標をやり遂げる達成感
第1期では、飯能市にある「棒ノ折山(棒の嶺)」に行きました。初心者でもチャレンジできる沢あり尾根道ありのアドベンチャールートがこの山らしさ。4つのチームそれぞれが定めた「チームの目標、チームとしての目的」をこの登山の日にトライ。「山頂お茶会」や「山頂書初め~来年の抱負」など、単に山登りするのではなく、登山を舞台にしたチーム・コミュニケーションを楽しみました。

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第2期では、奥多摩の「御岳山」を訪れ、武蔵御嶽神社を参拝しつつ、まるでゲレンデのような「東京の雪山」を体感。これは数日前の大雪によるもので、もともと設定していたルートが初心者には難しいと判断して、長尾平という見晴らしのよい休憩ポイントで雪山遊びに急きょ計画変更。晴天に恵まれ東京とは思えない非日常的を味わった中で、「勝手にCM制作」や「山頂スケッチ~大切な人に絵葉書を」といった各チームの取り組みが印象的でした。

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そして今週末、第3期では湯河原のとある山に行きます。ちょうど梅が見ごろで、低山とはいっても山頂からは相模湾が一望でき、都心からの日帰り登山にはうってつけの山。麓には日帰り温泉もあり、こうした下山後の楽しみも受講生のモチベーションを大きく上げています。

だれでも最初は初心者。その気持ちを共有できる仲間がいる。
「まったくの初心者が数日後には山頂だ! 最初の3回の講義で必要な装備、保険のこと、山の基礎知識を学んだ。あとは実践のみ。一人だと不安でも、仲間がたくさんいるし、チームメイトもいる。山登りデビュー!なんか、たぶん、できる気がする。楽しみ。」こう話してくれたのは、3期の仲村和泰さん。

ここ数年来ブームとなっている登山とはいえ、実際にはじめようと思ってもなかなか「一歩」が出ないという方が意外と多いようです。世の中には旅行会社や登山用品メーカーなどが主催するとても魅力的な登山ツアーや講座がたくさんありますが、いきなり「そこ」に行くのも気が引ける…。そういう方を対象に、まずは「世界有数の大都市・東京は、実は日本有数の日帰り登山天国」ということを知っていただき、「身近にある自然」や「山の楽しみ方」といった視点から、登山の第一歩の機会にしてほしいというのが、この講義の出発点。

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同じく3期の横山めぐみさんは「自分の日常生活に変化を与えたい」と言います。
「友人の影響や田舎に生まれ育ったということもありますが、淡々と過ぎていく日常に”動き”を付けたいのかもしれません。そんな想いから、初回の講義で聞いた『登山を一つの手段に』という言葉、その一言が妙に自分にはまったような気がしました。目的ではなくあくまでも手段、『これなら自分の想いを叶えられる!』そんなワクワク感を覚えました。ステキな仲間たちと一緒に迎えるこれからの時間が楽しみです。」

こうした気持ちのいい仲間とチームを組んでおよそ5週間、全力で「山遊び」します。これなら、初めての登山だって心強いですよね!

「買い物」も大きな楽しみのひとつ
東京近郊の季節や地理的背景などを踏まえ、ゲスト講師とともに事前に候補の山を検討しています。そして講義の中で「全員投票」によって登る山を決定。その上で、その山・その季節に合ったウェアやギアについてもしっかり説明します。これは、実際に山に行く前に、道具を揃える際の参考にしてもらうためでもあります。少しでもコミュニケーションを重ねて、登山当日をチームワークで乗り切ってもらいたいと考えているため、受講仲間やチームメイトと一緒に「買い物ツアー」をすすめています。

2期の畑中美香さんは、今後のショッピングも楽しみになったと言います。
「ひとくちに山登りといっても、何から手をつければいいかわからなかったので、ウェアや装備などの基本を教えてもらったのは本当にためになりました。実際に山に行ってみて、どんな風に体感温度が変わるのかを体験できたので、少しずつ自分らしいアイテムを揃えていきたいです。

自主的にチームメンバー同士あるいは全体で声をかけあって、講義のない日の仕事帰りや休日に「買い物ツアー」を楽しむ。そんなことも含めた自由大学らしい楽しみ方が、この講義にはあります。

チーム目標をやり遂げる達成感
普段の仕事で味わう達成感とは、すこしスパンの長いものが多いでしょう。数ヶ月におよぶプロジェクトや中には年単位で取り組む案件に携わる受講生もいるようです。そんな中、ほぼ初めての登山を舞台に、小さくても初めての「チーム・プロジェクト」を遂行することで、ちょっとした達成感を味わってもらいたいと考えています。

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道具や保険の選び方をじっくりと学ぶことができ、初心者でも安心して登ることができます。講義中に班分けをして、班の皆で登山中のテーマを決めたり、一緒に買い物をしたりすることで、モチベーションも高まります。」とは2期の太田拓馬さん。山には学生時代に登った以来とのことで、最後の講義で行うチーム毎の成果発表プレゼンテーションもかなりの力作でした。

「あ、自分生きてる」と再確認したとは、1期の海野文音さん。「登りは疲れましたが、山頂に着いたときは嬉しかった! 下りでは何回か滑り怖かったです。チーム目標にした『山頂お茶会』のチャイも美味しかったし、すれ違う人と挨拶したり楽しかったです!」とのことで、この時のチャイは、最後の講義での成果発表の場で再現し、みんなにふるまってくれたのが印象的でした。

すでに登山に親しんでいた1期の下村高広さんも、こうしたチームによる山行が新鮮だったようです。「山頂でお茶を点てたり、ヨガをしたり。チームごとに決めたテーマを共同作業で実践することにより、チームのコミュニケーションがより深まったように思います。山登りの面白さと楽しみの幅が広がりました。

こうして打ち解けた仲間が期を超えて交流する機会も設けています。課外で行った1期と2期の合同登山では、雨の中の大山に登拝してきました。今後、3期4期と仲間が増えてきたら、「日帰り登山」だけでなく、山小屋泊やテント泊といったワンランク上の登山にチャレンジする機会も設けたいと考えています。



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