料理をつくるという行為を通して、自分の選択や感覚をいちど取り出し、それを眺め、少しだけ編集してみる実験的なワークショップを開催します。
人生を、たまごに重ねて考えてみる
このワークショップで扱うのは、たまごです。
たまごは、誰もが知っていて、誰もが一度は扱ったことのある素材です。同時に、人生を重ねて考えやすい構造を持っています。
殻は、自分を守ってきた境界線や、飛び出してきた場所。熱は、経験や情熱、人生を形づくった時間。そして一皿は、いまの自分のあり方です。
たまごは、殻があり、熱を受け、形になる。その過程が、人生の流れと自然に重なります。この講義では、この比喩を正解にせず、自分の選び方や感覚を眺めるためのレンズとして使います。
気づきの起きるキッチン
この時間では、何かを評価したり、正解を探したりする必要はありません。料理の腕前も、言葉のうまさも関係ありません。
たまごを割り、火にかけ、少し待つ。そのあいだに、「あ、今こう感じているな」「こういう選び方をしたな」という気づきが、自然と立ち上がってきます。
キッチンという場は、人を少し正直にします。だから、無理に観察しようとしなくても、いま起きていることに気づきやすくなるのです。
食べて、言葉がほどける
料理ができたら、食べながら、調理前の想像と見比べます。この時間は、ひとりで内省するための場ではありません。同じテーブルに集まった他者と、つくったものを介して、少しずつひらいていく時間です。
「私は、この硬さじゃないと落ち着かない」
「思ったより、早く火を止めた」
そんな一言が、説明的でない自己紹介になります。料理という共通の話題があることで、言葉は自然にほどけていきます。
編集する、ということ
LIFE COOKでいう「編集」とは、文章を整えることではありません。起きたことを、いちど取り出し、少し並べ替えてみることです。調理前の想像、調理中の感覚、できあがった一皿、その料理にまつわる記憶。それらを、8ページのZINE(手づくりの小冊子とメモの間)にまとめます。
完成度は問いません。これは作品ではなく、観察の記録です。
創造するための問い
ZINEづくりのヒントとして、いくつかの「問い」を用意しています。
たとえば──
「あなたの家の卵料理は、どんな味でしたか」
「人生で殻を破ったと感じた瞬間はいつでしたか」
問いは、深い答えを出すためのものではありません。料理という具体的な行為を通して、自分でも気づいていなかった感覚が、自然と言葉になるためのものです。
不完全さを、そのまま置く
焦がしてしまったこと。思った形にならなかったこと。途中で判断を変えたこと。そうした「うまくいかなかった部分」こそが、その人らしさをよく表します。LIFE COOKでは、完成度よりも、偏愛やこだわり、途中の揺れや迷いを大切にします。不完全さは、そのまま編集の素材にしていいものです。
少しだけ、ひらく
完成したZINEは、参加者同士で共有します。誰かに見せるために書くわけではありません。けれど、結果として誰かの手に渡り、読まれる。この「少しだけひらかれる感覚」も、LIFE COOKの大切な体験です。
世界に差し出す前の、踊り場
料理をつくり、言葉にし、ZINEとして残してみる。すると、「自分を掘り下げた」というより、「ああ、自分はこういう選び方をする人間なんだな」という輪郭が、あとから立ち上がってきます。自分と世界のあいだに、編集された断片をいちど置き、一緒に眺められる場所が生まれる。世界に出す前の、踊り場をつくる感覚。LIFE COOKで起きているのは、その小さな体験です。
LIFE RECIPE STUDIOは、料理教室ではありません。文章講義でもありません。初対面の人たちがキッチンに集まり、たまごを使ったごく簡単な料理をつくり、その過程を少しだけ眺め、起きたことを紙の上に残してみんなで味わう。それだけの体験型ワークショップです。
けれど、この「それだけ」の時間は、あとから静かに効いてきます。
(第1期募集開始日:2026年2月11日)