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新講義の公開プレゼン「First Wednesday レクプラナイト」レポート(5月10日開催)

毎月第一水曜日開催 ワンテーマを探る誰でもウェルカムなイベント

510日、ゴールデンウィーク明けの表参道COMMUNE 2ndに参加者のみなさんが集まり、自由大学の毎月恒例イベント『First Wednesday』が行われました。今回のテーマは、レクチャープランニングコンテスト。「自由大学でこんな講義を開講したい」「こんなテーマを学びたい」という斬新なアイデアと、熱い想いを持った4名のプレゼンターが集結。さあ、今夜はどのような講義が生まれるのでしょうか。

「想いを繋ぐ金継ぎ」

1組目の発表者である竹安さんは趣味で陶芸をしていた際に、せっかく作ったものが割れてしまったそう。なんとか使い続ける方法はないかと探していたときに、金継ぎと出会ったのです。
金継ぎというと、言葉の通り「金」で継ぐイメージが強いですが、場合によっては漆で仕上げることもあるとのこと。伝統的な手法のため、こうすべきという型がかっちりあるのかと思いきや、ある程度の型はあるものの、最終的にどのような仕上げ方にするか、一番大事なのは「持ち主の想い」なんだと言います。器とその持ち主の間にどのようなストーリーがあるのか、そして未来にどのような形で遺していきたいのか、それによって金継ぎの仕方も変わり、生まれる作品も全く異なるものになるのです。想いを繋ぎ、新たな価値を生み出すことができる金継ぎ、伝統手法をいかしながら個性を表現できるとは意外な発見でした。

「未来を創るための哲学」

2組目の発表者は、上智大学大学院で哲学の研究をされていた田代さん、今井さん。
「哲学」と聞くと、なんとなく難しい問題を一人で思い悩むイメージが強いですが、お二人いわく哲学はもっと開かれているものなのだとか。古代ギリシャ、哲学者として名高いソクラテスが、アテネの広場で正義とは?愛とは?国家とは?というテーマを市民と対話し続けたことが、哲学の起源のようです。
そんな歴史ある哲学は、誰もが生きづらさを抱える現代だからこそ必要だと言います。多様な人間が共存していくためには、相手を論破したり、安易に共感したり、ましてや「人それぞれだよね」とわかり合うことを諦めたりすることではなく、わかりあいを目指して他者と対話することが大切になるのです。まさにこれこそ哲学を通じて成しえることだというお二人の熱弁に、会場の温度が急上昇しました。

「Liberal Arts Studies」

3組目の発表者は、アメリカの大学でリベラルアーツを学んだ青木さん。
自由大学にはたくさんの講義があり、さまざまな学びを得ることができますが、そもそも「どう学ぶのか」という学び方を学ぶ講義があってもいいのではないか、という考えから本講義をひらめいたようです。
リベラルアーツは、(A)Philosophical Thread―本当にそうなのか?と今あるものを疑う多角的な視点を持ち、(B)Rhetorical Thread―伝統的に遺されたものや、長く語り継がれている物語などを通じで、人間社会で何が価値とされてきたかを知り、(C) Experimental Thread―(A) (B)をもとに、今まだ社会にない価値を想像し実践する、という3つの要素で構成されています。ここでいう「学び」は、さまざまな知識、教養を身につけることではなく、得た知識に対して自分はどう思い、何を感じるのか、そしてどう行動するのかを掴むこと。学ぶことで自分自身と向き合い、精神的な自由を手に入れられるという思想をもとに考えられたこの講義は、「大きく学び、自由に生きる」という自由大学のテーマを体現しているかのようでした。

「自分の取扱説明書をつくろう~仏教の視点から自分を識る~」

4組目の発表者である石川さんは、仏教の視点を用いながら、自分の過去、現在を棚卸し、そこからどのような最期を迎えたいのか、そのためにこれからをどう生きていくのかを考えていく講義を提案。プレゼンテーションの後半では、今回教授を務める僧侶も登場しました。山梨で僧侶をやる傍ら、医学療法士やカウンセラーとしての顏も持ちあわせているというから驚きです。仏教というと、一部の人に限定されたものだと壁を感じてしまいがちですが、僧侶は「仏教は誰の心の中にでもある」と言います。仏教には答えがなく、自分自身と向き合い、その心に耳を傾けることが重要となります。そうして生まれた感情を、心を許せる空間で互いにシェアしあうことで、新たな道が開けるのだとか。「仏教を知る」のではなく、「仏教をする」人が増えてほしいという、願いのこもったプレゼンテーションでした。

4組の個性あふれる発表の後は、イベント参加者による投票タイム!プレゼンテーションを聞いて、一番受けたいと思った講義に投票します。接戦の結果、今回見事一位に輝いたのは「未来を創るための哲学」を発表した田代さん、今井さんでした。投票理由には、「一番想いの強さを感じた」「哲学対話を通じて丸ごと自分が変われる、という言葉が響いた」「情熱がすごかった」などがあり、お二人の熱量に圧倒された人が多かったようです。

結果発表後、お二人にお話しを聞きにいくと、優勝の喜びとともに、哲学の魅力をこう語ってくださいました。「普段街中ですれ違ったり、満員電車で隣に立っていたりしただけだと、仲良くなったりしないですよね。でも、話してみたら、もしかしたら素敵な考えを持っているかもしれない。それを知るきっかけをつくり、こんな人とも分かり合えるかもしれないという希望の入口を生みだせるのが、哲学なのだと思います。」

今回のレクプラは、アプローチ方法は違えど、それぞれの「個性」や「想い」に向き合い、他者と分かち合っていく講義が多いように感じました。さまざまな生き方、働き方の選択肢が生まれているからこそ、自分の考えを持ち、違う考えを持つ相手を理解することが求められ、SNSが発達したからこそ、リアルな場で人とつながり、対話していくことが重要になってきたのかもしれません。そんな時代の変化を感じさせる2時間でした。

Text:高越 温子 Photo: 篠原 梨沙)



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