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本を語ることは人となりを語ること「First Wednesday BOOKナイト」レポート(2月1日開催)

毎月第一水曜日開催 ワンテーマを探る誰でもウェルカムなイベント

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寒さのなかに少しずつ、少しずつ、春の訪れが醸される如月の夜。まさしく”First”な朔日に行われたFirst Wednesday、今回のテーマは『BOOK トークナイト』です。

参加者は「温まる本」をキーに、自分で選んだ珠玉の名作をプレゼンテーションします。はじめましてのメンバーで即興チームを組んでの投票戦。さて、どんな本や人柄にご縁つながる夜となるのでしょう。

本を語ることは人となりを語ること

まずはチーム内で自己紹介がわりのように自分で選んだ珠玉の本を紹介です。知らない人間同士が「本が好き」というたった一つの共通項を元に、自分の良いと思うものを語り合う。本のジャンル、内容、心の琴線にふれたことを語るうち、それは本の紹介にとどまらず語る人の人生観や日々の生活、知性に触れることにもつながります。小説、料理本、エッセイに詩集、さらには絵本に写真集のような文集も。「温まる」というテーマをキーに持ち寄られた本は、一見してジャンルもテーマもばらばらですが、本を紹介しあうことで一瞬にしてその人となりが焙り出され、チーム内の熱気であっという間に水平教室中の空気が「温かく」溶け合ったようでした。珠玉の一冊からさらにプレゼンのための「代表本」を選出します。それぞれがそれぞれの思い入れや本の内容を、今回のテーマに照らし合わせ、穏やかな空気のなかで代表BOOKが選ばれました。

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それぞれの本に感じる新しい世界感

4つのチームが発信した本の世界はまさに十人十色、水平教室ごとまだ見ぬ世界へいざなってくれるような不思議な感覚につつまれました。

「極力感性が入らない」フラットな視点から猫の世界観を描く絵本『ネコヅメよる』。ふてぶてしいほどの猫の表情や動きを描くなかにも、猫の視点、猫の目から見える月の夜を丹念に絵とミニマムな文書表現で語る姿勢にはリスペクトの念をも感じられ、温かさを感じられます。その世界感の咀嚼も読者によってさまざま。禅の世界との共通項にもつなげられました。

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美しく装丁された詩集『わたしを束ねないで』のなかには、50年以上前に日本社会に生きた一人の女性の、人生の本質をつくような言葉がやさしい表現の中にも強い意志を持って凜と座しているようでした。プレゼン最後には発表者による表題詩の音読。魂ののった温かい声一語一語が自由大学校舎につきささるようでした。

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 “How Starbucks saved my life”は一点、実話をもとにしたエッセイ集。一流大学を出てキャリア街道を歩いた中年男性がリストラにあい、なんとなく座っていたスターバックスでちょっとしたノリで働いたことで「働くってなんて楽しいんだ!」と心救われるストーリー。発表者はご自分の仕事人生を重ね、心の機微をシェアしてくれました。誰かの生活を豊かにすること、仕事の根本はそういうものと本質が腹に落ちた瞬間でした。

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動物たちが「どうぞ、どうぞ」と自分の次の「誰か」のために贈り物をしあう『どうぞのいす』はただひたすらに、見返りを求めない献身の心であふれています。うさぎが椅子をつくった理由は「誰かにくつろいでほしい」ただそれだけ。「どうぞのいす」の看板をもとにさまざまな動物たちがどうぞの精神でどんぐり、はちみつ、パンとさまざまな思いやりの形を残していきます。「どうぞ」と誰かを思いやることは当たり前だけど、改めてその大きな力と温かさを感じられるこれもまた大切な本質に気付かされるような一冊でした。

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「本が大好き」、「本屋さんを歩くのが好き」、発表後の教室でもこれから本屋に求められるものは何か思い想いに語りあわれ延々と続くような熱気あふれるBOOKトーク。さまざまな言葉で語られるなかにも、本との出会いに、想定外の「知らない世界との出会い」を求めているように感じられました。自分の知らない世界はきっとまだまだたくさん、知らないことを知る喜びというものを人は本能として求めているのかもしれません。

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次回のFirst Wednesdayは『レクチャープランニングコンテストナイト』。未来の新しい講義がうまれる瞬間に立ち会いませんか?3月1日、リニューアルしたcommon2ndと共にお待ちしています。

(Text:八児美也子 Photo:下防さおり)



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