オリエンテーション・小麦の種まき
畑を耕して小麦を蒔きます。作業をしながら、村の暮らしについて、小麦について、お話を伺います。
新講義
Farm to Tableをつくろう
本当に安心安全な食べ物ってなんでしょうか? どこで作られたのか、どんな人が作ったのか、どんな種子を使っているのか、どんな農法なのか、農薬は使っていないか…、消費者として自分の食べるものの情報を得るのはなかなか大変な作業です。
信頼できるお店や農家さんを見つけるのも一つの方法ですが、「自分の食べるものを畑から食卓まで自分でつくる」というのは、安心安全な食べ物を得るための究極の方法であり、一番豊かなことかもしれません。
この講義では、一つの作物の種を畑に蒔いてから収穫するまでを体験し、さらに収穫物を使った料理を皆さんと食卓を囲んでシェアするまでをゴールとします。
普段スーパーでお金さえ払えば一瞬で手に入ってしまう食材が、どんな季節に種子が蒔かれ、どんな芽を出すのか、どんな葉っぱをしているのか、実をつけるまでにどれだけの時間がかかるのか、どのように収穫され、処理され、私たちの口に入るのか。その過程を自分の目で見て、身体で感じ取っていただきます。
講義を終えたあと、いままで見慣れた食べ物に全く違う重みを感じるようになるはずです。自分が何を食べているのかが「分かる」という安心感を得るとともに、たとえ自分が育てたものでなくても、その生産過程と流通過程に想像力を働かせることができるようになります。お店で売られているものがなぜそんなに安いのか、高いのか、自分の体験をもとに判断できるようになります。
学びの場は、都心から電車とバスを乗り継いで約1.5時間、東京都本土唯一の村「檜原村」。多摩川の支流「秋川」の上流域にあたり、村の9割以上を山林に覆われた山間地域です。秋川の清流に沿って集落が点在し、川と山の間の傾斜地に畑が広がる風光明媚な村です。
しかし住所こそ東京ですが、他の日本の多くの地域と同様に、都市部へ人口流出と少子高齢化が進み、農業の担い手も高齢化が進んで、耕作放棄地が増加傾向にあります。かつては都市住民の戦時中の疎開先として、戦後に人口のピークが約7000人を迎えたあと徐々に人口が減り続け、現在は2200人ほど。
農業体験を通して地域に活気を呼び込み、耕作放棄地の活用方法を探ることも、この講座を開講する目的の一つです。農業だけでなく、田舎暮らしやまちづくりに興味のある方のご参加も歓迎します。
農地を集約し単一の作物を大規模に効率よく生産するという平野部の農業とは異なり、大型の機械が入りにくく大きなビニルハウスも建てられないため、手作業主体で生活に根ざした農業がいまでも行われています。収穫した作物は家族や地域でまず自家消費され、余剰分だけが主に村内の物産店で販売されています。
春は山菜を採って畑にタネを蒔き、梅雨が来る頃には梅を採って梅酒や梅干しを漬ける。夏は村の特産物であるジャガイモや夏野菜の収穫、川ではアユやヤマメが美味しい季節。夏が終わる頃には冬野菜のタネを蒔く。秋には果樹が実を付け、畑では大根や白菜を収穫が始まり、保存食を作って春を待つ。四季と日々の暮らしに寄り添った農業が営まれています。
農業の担い手の高齢化や流通の変化によって、村で栽培されなくなった農作物もあります。その一つが「小麦」です。平地が少なく田んぼも少ない檜原村では、小麦を栽培してうどんやすいとんにして食べる風習がありました。また小麦は洋の東西を問わず、古代からあらゆる料理で使われている基本的な穀物です。まずはこの小麦づくりを通して、現代の食のあり方を見つめ直します。
今回の講義では、檜原村で種取りされてきた小麦を栽培し、昔ながらの農具を使って小麦粉にして、うどんやすいとん、パンなどをつくってみんなで食べましょう。
小麦の栽培は、村で小麦を作っていた農家のおじいさんや、地域で里山の暮らしを実践しているNPOの方々をゲストにお招きし、うどんやパンづくりは村のおばあさんやパン屋さんにご協力頂く予定です。
(第1期募集開始:2017年10月30日)
第1回
畑を耕して小麦を蒔きます。作業をしながら、村の暮らしについて、小麦について、お話を伺います。
第2回
麦の栽培といえば麦踏み。収穫までに合計4回、麦踏みをします。麦を踏むことで霜柱による害を減らし、茎を強くして倒れなくなり、根がよく張って実りもよくなります。期間中、都合のよい日に一度ご出席ください。
*麦が成育する約3ヶ月の間、希望者の方には青山ファーマーズマーケットで檜原村農産物の販売や、村で他の野菜の種まきなどの体験をしていただくことも可能です。
第3回
麦踏みから約3ヶ月、麦の穂が金色に輝き出す季節です。梅雨の合間を見計らって、収穫と麦干しをします。
第4回
約1ヶ月間、麦を干して乾燥させたら、脱穀(実と茎を分ける)と籾摺り(籾殻をとる)、製粉して小麦粉にします。電気を使わず手動の農機具で行います。
第5回
ここまで来るのに8ヶ月! やっと小麦が食べられます。食べ物の有り難さが分かる瞬間。自然の恵みに感謝しながらみんなでいただきましょう。パンやうどん以外にも、小麦粉で作りたいものがあったら作ってみましょう。